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アメリカ101 第223回
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先進工業諸国での急速な高齢化社会への移行が進む中とはいえ、さすがに、世界最強の超大国の最高指導者として、核戦争のボタンを握るアメリカの大統領が「任期切れの際には86歳」というのは、やはり「それはちょっと・・・」いう向きが少なくはないのでしょうか。
昨年11月に80歳の“喜寿”を迎え、今年11月の選挙で再選を果たせば、任期切れの時には86歳というジョー・バイデンですが、野党・共和党のドナルド・トランプ前大統領との再度の“一騎打ち”の可能性が高まっている中、早くも巷間では民主党内での「ポスト・バイデン」の器と目される“七人衆”が話題となっています。
バイデンの年齢については2月8日に、意外なところから“火の手”があがりました。それは、バイデンがオバマ大統領の下での副大統領ポストを退任後に、機密書類を私邸などに保管していたものの、その取り扱いが杜撰(ずさん)だったと懸念される事例です。特別検察官による捜査対象となっていたケースに関する報告書で、「バイデン氏の記憶力にはかなりの制限があった」という記述があり、「記憶力に劣る高齢男性」のために、有罪とするのは難しいとの結論に至ったとの表現があったからです。
この報告書では、バイデンは検察側の聴取に際して、長男のボー・バイデン氏がいつ死去したかも思い出せず、副大統領のポストにあった時期も間違った答えをしたとし、「記憶に限りがあった」と指摘するなど高齢者特有の限界がみられた旨の記載がありました。
バイデンに「万が一」のことがあれば、当然ながら副大統領のカマラ・ハリスが後任となるわけですが、再選を果たしたあとの2028年の大統領選挙が民主党の“次世代”指導者選びの“本番”です。当然ながら現時点では、後継者については憶測の範囲を出ないわけですが、以下のような政治家が“有力後継者”と名前が上がっています。
「ポスト・バイデン」“七人衆”のトップはハリスです。カリフォルニア州選出の連邦議会上院議員を経て初の女性副大統領となっただけに、その勢いで「初の女性大統領」誕生を待望する向きが多いのは当然でしょう。同じくカリフォルニア州からは現州知事のギャビン・ニューサムが“成長株”です。サンフランシスコ市長、副知事を経て知事ポストにあり、自他とも認める「バイデン応援団長」です。
ハリス以外に有力女性候補が2人います。ひとりは、「初の女性大統領」有力候補として当コラムでも取り上げたミシガン州知事グレッチェン・ホイットマー。伝統的に民主・共和両党接戦州の出身だけに、本番の大統領選では勝利が確実視されるという有利な立場にあります。もうひとりは、ミネソタ州選出の連邦上院議員エイミー・クローバッカー。前回の大統領選にも出馬し、初戦のニューハンプシャー州予備選では3位につけたものの、次のサウスカロライナ州では勢いを持続できず脱落。
男性陣では、ニューサム知事に加えて、同じく現職州知事のメリーランド州のウェス・ムアーとノースカロライナ州のロィ・クーパーが注目されています。黒人のムーアはジョンズ・ホプキンズ大学を経て、アメリカの大学生としてのエリート・コースであるローズ奨学金を受領してイギリスのオックスフォード大学に留学。投資銀行家やテレビ番組のプロデューサーなどを経て昨年知事に就任。アメリカの黒人州知事としては5人目です。クーパー知事は同州議会議員や州検事総長を経験、州知事としては2期目。共和党色が濃い州だけに、穏健派路線を堅持しており、民主党大統領候補に指名されれば、南部州からは1992年のビル・クリントン以来2人目となります。
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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)
通称:セイブン
1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。
(2/27/2024)
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