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耀風 YOOFU
書家
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文字はタイプするのが当たり前の昨今、日常的にペンや鉛筆で文字を書くということがごく少なくなった。そんな中で、筆で文字を紡ぎ、書を通して人々を魅了する美文字アートを展開する書家 耀風さん。「天気のいい日にはサンタモニカピアやハリウッドなどに行って、ストリートミュージシャンたちに混ざって、そこで筆を握って漢字を書いていると各地からの観光客の人たちが『何を書いているの?』と興味深く集まってくるんです。みんなの名前を当て字にして、希望を与える良い意味合いを持つ文字にして書いて渡すととても喜んでくれます」。オンラインでも筆で書く名前の漢字サービスを提供。こちらも好評を得ている。先日は、日本の酒造会社のローンチパーティがコリアタウンで行われ、会場で記念品のトートバッグ一つひとつに書道を書いて来場者に手渡しするなど、企業やコミュニティに向けたイベントにも度々登場している。
耀風さんと習字との出会いは24歳の時。厳密にいうと筆で書く書道ではなく、ペン習字だった。「書道家って、幼い子供の頃から書道を習い始めたっていうイメージがありますよね、でも自分は全然そういうのではありませんでした。社会人として働いていたある時、職場の上司の書く字がすごく綺麗で感動したんです。その方の字があまりに美しかったので、それをマネして書いていたら、同僚から『教室を見つけたから一緒に行かないか』と誘われてペン習字を習い始めました」
20代半ばになると、自分の本当にやりたいことは何なのか、自分探しの旅に出た耀風さん。「地元滋賀から東京に出たり、ワーホリでカナダに行ってみたり。でも、世界のどこに行ってもペン習字は自然と続けていました。アメリカに来た時も、ランドリーで洗濯物ができるのを待ってる間に練習していたり、書くのを辞めませんでした」
2018年よりペン習字から書道に移行し、筆を持つようになった。「そんな時、来月の家賃が払えないほどの金欠に。これはまずい!悩みながらたまたまサンタモニカを歩いていたら、ストリートで書道をしている日本人の男の子がいたんです。彼は書道をしながらアメリカを旅しているとのこと。その頃の僕の字はまだ人に見せられるものではなかったのですが、彼にたのみ込んで横で字を書かせてもらいました。背に腹は変えられないピンチが転機になった」
「心のあり方を伝える人になりたい」と自身が希望し、所属流派より与えられた雅号は『耀風』。「書に向かっていると、内からの自分が今、何を感じているかに目を向けることができるんです。様々な情報が溢れる時代の中で、いかに無駄なものを遮断して、いかに自分の内にあるものが研ぎ澄まされていくか・・・。ジャパニーズ・カリグラフィを通して伝えていきたいと思います」。
(4/17/2024)
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