立川志らく師匠が「そこまで言って委員会NP」(読売テレビ)で落語界の人材を嘆いた。この日のテーマは「落語界にとって心配なこと」。ニューヨーク州弁護士山口真由が「真打の落語を見に行ったが面白くなかった。」と問題提起。これに対し志らくは「本当に良くないですよ。真打ったって、別に15年くらいやったら、落語出来なくても真打になれる。例えば15年間一生懸命法律を勉強しても弁護士にはなれない。15年間野球の練習をしたからってプロにはなれない。落語家は15年やったら誰でも真打になれるんですよ。才能のある者が漫才やコントに取られている。もう9割方能力の無い奴ばかりが集まっちゃって。」と言い放った。
続けて落語の理想について「江戸の時代のお笑いをやっているんだけど、そこに現代の感覚がバンバン入ってくるが江戸の雰囲気が残っている、ものすごく高度なものをやらないといけない。」と落語界の現状を嘆いた上で「ダウンタウンやビートたけしさんがやったら面白いと思うよ。たけしさんこの前、落語をやったらテクニックが無くてボロボロなんだけど、誰の落語より面白い。」と。もちろん松ちゃんやたけしさんへのリップサービスもあるだろうが、志らくの本音だろう。
改めて落語を考えてみた。私はどちらかと言えば名人の話を聞きたいと思っていない。人間国宝みたいな噺家にあまり興味は無い。お客を唸らせる様な噺家より、先代の林家三平さんや、今なら昔昔亭桃太郎(せきせきていももたろう)さんが高座で話すくだらない落語が大好きなのだ。日常生活ももしかしたらダメな人なのかと感じさせてくれる。「かみさんの尻に敷かれて家に居られず、逃げ場が高座しかない」そんな感じの噺家が好き。
最近の落語家は大学の落研出身者が多いらしい。リクルートの一貫として入門してくる落語家エリートより「社会に適応出来ない。借金に追われて逃げるように落語界に飛び込んで来る。入門しても女癖が悪いは、振込詐欺に騙されて有り金持っていかれ、師匠に話すことも出来ずに街を彷徨っていると、首根っこ掴まれ引き戻される」そんなバカを枕話にする噺家を見たい。古典落語に全くこだわらない。話の途中で内容を忘れても構わない。才能無くても構わない!面白くない話も5回聴くと慣れてくるのだ。そんな噺家こそ「現代の与太郎」の気がする。
日本テレビ「笑点」を面白くなくて降板した林家三平、だからこそ今面白い。高座が見たい。落語界のシステムやお客さんの噺家への価値観が、おバカ落語家を育てる環境に無いのかもしれない。「与太郎」が認知されない時代、寂しすぎる。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。