第四回
お節料理は何のため?
『お節』とはどんな意味?
「お節」は「おせっく料理」が語源です。では、「せっく」は「節句」でしょうか。それとも「節供」でしょうか。今はどちらも正解なのですが、元々は「節供」。本来節供とは「行事の日の食べ物のお供え」のことを指した言葉でした。
行事毎にその季節の食べ物をお供えし、大自然の恵みに感謝し、そして来年も食材に恵まれますようにと神様にお願いをします。その後に、神様からのお福分けとしてお供えを有り難くいただきます。この頃は、人日の節供に七草粥や、端午の節供には柏餅をと多くの皆様が日本の伝統行事を楽しんでいらっしゃることをSNS等でお見かけし、喜ばしく思っておりますが、大切な「お供えすること」をお忘れになっているのではないかと気になります。お供えをせずにいただく食事と、お供えをして神様からのいただきものとしていただく食事では、有り難みがかわります。有り難いと思うからこそ、幸せな気持ちになり、大切にいただこうと思うことができます。美智子上皇后陛下の有名なお言葉、「幸せな子を育てるのではなく、どんな境遇に置かれても幸せになれる子を育てたい」。何事も神様からのいただきものとすることで、どのような状況においても幸せに思うことができる、そういう考え方をしきたりを通して連綿と受け継いでいるのです。
お節をいただく時は「柳箸」を使います。柳箸の両端が細くなっているのは、片方を人が、もう片方を神様がお使いになるためです。神様と人がともに食事をいただき、喜びを分かち合う、神人共食をして、幸せな食事の時間を過ごします。
そして、「吉事が重なりますように」と願いを込めてお節は重箱に詰めます。
めでたい食材ばかりを重箱に詰めるのは、予祝の文化に由来します。予祝とは先に祝うことで祝うべきことがやってくるという考え方のこと。「笑う門には福来たる」がまさに予祝です。福が来たから笑うのではなく、笑うから福が来る。周りの人のお幸せを祈って、めでたく過ごす。それが日本のお正月の過ごし方です。
(12/23/2024)
筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com