【ロサンゼルス14日】6月16日号掲載 アメリカ101より
「週休2日制」が世界的な“常識”ですが、このところ世界各地で、週末の休みの日数を3日間とする「週休3日制」(労働4日制)実現に向けた動きがみられます。単純に1日当たりの労働時間を8時間から10時間に延長し、給与・賃金水準に変更なしというやり方で実現するのか、あるいは、この機会に、労働時間が8時間短縮となるものの、給与水準は据え置くというやり方にするかなど、その具体的な方策では議論はあるものの、「ゆとり」の時間を増やす動きが加速しています。日本でも、2021年の閣議決定による「経済財政運営と改革の基本方針」で、「選択的週休3日制」に触れています。
このような国際的な動きを組織する「グローバル週4日制」(4 Day Week Global)と称する非営利団体が2019年にニュージーランドで立ち上がって以来、「100:80:100」というスローガンのもと、働きすぎの「燃え尽き症候群」(burnout)の解消に向けた活動が世界的に拡大を続けているようです。このスローガンの数字は、「生産性を100%維持し、従来の80%の労働で、従来の100%の代償を確保する」を意味しており、労働者や雇用主にとってベターであるだけでなく、十分に実行可能としています。このうち「従来の80%の労働」とは、過去の「週40時間労働」から、新たな「週32時間労働」に労働時間を短縮することを意味し、「週休3日制」実現には欠かせない目標
です。労働時間の短縮では、その法制化が連邦議会で審議されることになりました。
これは、リバーサイド郡一帯をカバーするカリフォルニア州第41選挙区から選出された日系のマーク・タカノ下院議員(民主)が、「週32時間労働法案」(Thirty-Two Hour Workweek Act)として提出した法案。アジア系議員としては初めて性的マイノリティであることを公表した異色の政治家です。
この法案は、1940年に施行となった現行法「公正労働基準法」(1940 Fair Labor Standard Act)に代わるものとして提出されたもの。現行法では、「週40時間労働」が定められており、それをオーバーした場合には「残業代支払い」を義務付けるという、当時としては画期的な規定であったのですが、その後80年以上にわたり「据え置き」ということで、「時代遅れ」は否定できませんでした。
とくに新型コロナウイルス感染症の急速な拡大で、対応に苦慮した医療機関で働く医療従事者のうち、看護師の間での「燃え尽き症候群」の拡大が目立ち、は、多数の離職者が出たことへの対応策としての意味合いもあります。このケースでは、離職引き留めには、給与水準を引き上げるだけでは効果薄で、「十分な休養」が欠かせないという現実が浮き彫りとなり、週休増が必要との指摘があったようです。
しかし雇用主側にしてみれば、労働時間の短縮が企業売上高の落ち込むを招く可能性への懸念は拭えないのも現実です。だがケンブリッジ大学とボストン・カレッジによる、労働時間と売上高の相関関係を探るパイロットプロジェクト共同調査では、イギリスでの「週労働4日(32時間)」への移行の効果は、「労働時間の短縮は企業の売上高に悪影響を及ぼすことなく従業員の心身の健康状態を改善させていたことがわかった」(「フォーブス」誌)」とのことで、「週休3日制」のメリットは予想以上のようです。
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