Vol.24 ロサンゼルスマラソン カリフォルニア州
延々と続く人波を右へ左へと動きながら走る事、数マイル。人混みから解放され、周囲に目を配る余裕が出てくると、沿道で声援を送る多くの人たちが見えてくる。ハリウッド・ブルバードにはコロナ危機にも関わらず、例年同様に多くの人たち。米国は移民の国。人種の坩堝(ルツボ)として知られているが、その中にあってもロサンゼルスはかなり特殊だ。人種・国籍の多様性のみならず、ホームレス、不法移民、億万長者、LGBTなど、本当に様々な人たちが暮らしている。ロサンゼルスの街を貫くLAマラソンのルートはまさにその縮図。 チャイナタウンに始まり、ダウンタウンのホームレスが集うテント村。すぐ前には、Students Run LA (SRLA)という、低所得家族を支援する団体からのサポートを受けて走る中高生の集団。レース中盤では、ターバンを頭に巻いてオレンジを配るアラブの人たち、ベランダに掲げたレインボー旗の横から声援を送るゲイのグループ。ロデオドライブの見るからにリッチなマダム達。これらの人たちがボランティアとしてレースをサポートしたり、疲れ切って歩いているランナーに励ましの声を送ったり。コーナーを曲がるたびに、異なった文化やバックグラウンドを持つ、多種多様な人達から送られる暖かさを、肌で感じる事が出来る。普段は別々のコミュニテーで暮らし、触れ合う機会の少ないこれらの人々。ロサンゼルス・マラソンは、ランナーへの応援を通して、これらのコミュニティーを結ぶ絆の役割を果たしてるとも言える。
コロナ危機が叫ばれる今大会でも、ボランティアの人々の献身的なサポートや、沿道からの声援が変わることはない。ゴールを目指して走るランナーへの鼓舞と共に、家に引き籠らずにレースをサポートすることによって、「コロナに負けないぞ」と、自らを励ましている様にも見えた。
地球を走る
アウトドア・アドベンチャーのすすめ
Nick D (ニックディー)
コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈けまわる毎日。
「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。