連載・コラム アメリカ101

アメリカ101

  • 第79回

日本人初のマスターズ優勝を支えた

「早藤の一礼」。

 

    第79回 日本人初のマスターズ優勝を支えた 「早藤の一礼」。  

    2021年04月13日 アメリカ101

  • 第78回
「アメリカの民主主義」の闇

ジョージア州での「2021年公正選挙法」制定

    第78回 「アメリカの民主主義」の闇 ジョージア州での「2021年公正選挙法」制定

    2021年04月06日 アメリカ101

     ジョージア州での「2021年公正選挙法」制定で、アメリカが再び、それが抱える政治面での亀裂の深さを改めて露呈しています。共和党が多数を占める州議会が、「公正な選挙の実現を確保する」ことを目的としたとする立法措置を採択、最終的に3月25日に共和党出身のウィリアム・ケンプ州知事が署名したのに対して、民主党支持者や公民権運動団体からは、「黒人を中心とするマイノリティー(少数派)の投票権に制限を加えようとする『有権者抑圧』であり、南北戦争後も黒人の公民権を実質的にはく奪してきた悪名高いジム・クロウ法の再来だ」と強く反発する動きが噴出、大きな政治問題となっているからです。     その余波で、プロ野球のMLB(メジャーリーグ)は、今年7月に同州の首都アトランタで開催予定だった“夢の球宴”オールスターゲームについて、「MLBはすべてのアメリカ市民に対する投票権を支持し、投票箱へのアクセスへの制限に反対する」(MLBコミッショナー、ロブ・マンフレッド)として、同市での開催を取り止め、他の都市で開催するという前代未聞の決定を発表しました(代替開催都市はコロラド州デンバーに決定)。また同市に本社を置く巨大企業コカ・コーラやデルタ航空も、当初は州議会で審議の段階では同法案への態度表明は控えていたものの、黒人組織や消費者団体からの強い圧力で、「この法律は投票権行使を難しくするもの」(コカ・コーラ社CEO【最高経営責任者】ジェームズ・クインシー)と糾弾する声明を発表。これを受けた、「私のCEOへのアドバイスは、政治に口出しするな、ということだ」という連邦議会上院共和党のトップであるミッチ・マコネル院内総務の反撃を買って、伝統的な共和党と大企業の間に存在していた“蜜月関係”に水を浴びせるなど、波紋が広がっています。     問題の法律は、2020年11月の大統領選挙でジョージア州では総投票数約500万票のうち、得票率でわずか0・26ポイント差で敗北したドナルド・トランプの"怨念”晴らしを狙った共和党の戦略だというのが同法反対派の主張です。トランプが、選挙結果が最終的に確定する直前の今年1月2日に、同州の選挙管理担当のブラッド・ラフェンスバーガー州務長官に電話をかけて、「オレは1万1780票を見つけたいだけだ」と懇請したことがワシントン・ポスト紙の特ダネで知られています。そうすれば、同州では得票数が一票上回って、民主党候補ジョー・バイデンを破り、同州の16の大統領選挙人を手にすることで全体の選挙人数で過半数を確保、再選への道が開けたという背景での発言です。今回の州議会での共和党の「2021年公正選挙法」推進は、「公正」(integrity)という高尚な名称を借りて、その敗北の苦渋を繰り返さないための「(共和党の)票起こし」ならぬ「民主党票潰し」 (有権者抑圧)を狙った露骨な党利戦略だというわけです。     一方、共和党側の同法推進の理由は、今回の大統領選挙では大規模な不正行為があったとして、そうでなければトランプは再選を果たしていたという観点から、不正防止のために期日前投票や郵便投票を制限する必要があるというものです。全文で98ページにおよぶ詳細を極めた内容で、投票所で順番待ちで行列する有権者への、第三者による水や食料の提供禁止、郵便投票用紙請求には身分証明書の提示が必要などなど、「重箱の隅をつつくような」という日本語の表現に相応しい“完全さ”です。     日本では基本的には「18歳以上の成人」有権者は住民基本台帳に基づいて、自動的に郵送されてくる投票所入場券を提示して投票という簡単なプロセスですが、“合州国”であるアメリカは、各州が独自の選挙制度で連邦選挙を実施しており、それが政争を生む背景で、「アメリカの民主主義」の“辛気臭さ”を反映したものと言えそうです。  

  • 第77回
ロサンゼルスの深刻な水不足、
迫りくる干ばつ危機

 

    第77回 ロサンゼルスの深刻な水不足、 迫りくる干ばつ危機  

    2021年03月30日 アメリカ101

      ロサンゼルス・タイムズによると、カリフォルニア、とくに南カリフォルニアは、このところbone dryだそうです。「骨が干からびている」ような干ばつ状態を形容したもので、英和辞書の定義では「絶乾」とあります。「絶対乾燥」の略語で、カラカラに乾いた状態を表現したものですが、このところの好天で芝生や樹木が一段と青々として伸びている街頭風景からすると、干ばつと言われてもピンときません。しかし統計上では、昨年末から今年にかけての“雨期”の降雨量は平均値をはるかに下回っており、関係者の間で期待されていた集中豪雨という「March Miracle」も幻とあって、今年の夏から来年にかけて水不足が深刻化する見通しで、これに伴い農業などの産業用水だけでなく、住宅レベルで節水がこれまで以上に求められるのは必至です。    ロサンゼルスを含む南カリフォルニアでの雨期は11月から翌年3月で、その降雨量などの気象情報はダウンタウンにある南カリフォルニア大学(USC)構内に設置された観測機器で計測されています。そして今シーズン当初の昨年12月の降雨量は1.84インチ(46.73 mm,1インチ=25.4mm)でした。過去平均は2.33インチですから、出鼻で低い降雨水準でした。そして例年なら雨がよく降る1月と2月では、1月が2.44インチと例年並みだったものの、2月は微量で統計上はゼロにとどまり、「乾いた雨期」の様相を示していました。このため、干ばつを懸念する農業関係者を中心に、例年全米大学バスケット選手権が開催される3月の「March Madness月間」ならぬ「March Miracle」(3月のミラクル大雨)に期待する向きが多かったのですが、皆さんがご存じのように、1.4インチという期待外れとなり、結局今シーズンの雨量は4.55インチで、例年の雨量11.68インチの半分以下にとどまりました。    この干ばつ状態は南カリフォルニアだけにとどまらず、ネバダ、ユタ、アリゾナ、ニューメキシコ、コロラド、ワイオミングといった南西部諸州に及んでいます。カリフォルニア州の場合は、昨年秋以降、高気圧が太平洋沿岸を蔽っているために乾燥した気象が続いているのですが、その背景には、太平洋赤道付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低くなるというラニーニャ現象の影響があるとのこと。このためアメリカ北部諸州では例年より気温が低く、雨量/積雪が増える一方、カリフォルニア州を含む南西部一帯では気温が上昇、乾燥状態が顕著となり、干ばつの可能性が高くなるというわけです。カリフォルニア州の場合は、干ばつや水不足の予兆として重視されているのが、大量の積雪で貴重な水源となるシエラネバダ山脈でのSnowpack(雪堆積/残雪)水準です。同山脈の山中にあるフィリップス・ランチ・ステーションに設置された残雪水準計で定期的な定点観測する積雪の高さが例年に比べてどの程度かで、春から夏にかけての同山脈水系の雪解けによる水量を予測することができるわけです。3月初めに州政府水資源局(DWR)が計測した最新の調査では、平均値の61%で、2年連続で夏季の干ばつ状態が予想されるとの結果でした。    このような干ばつが現実となる見通しを裏付けるさまざまな数字を受けて、州政府水資源管理委員会は3月22日付で農業関係機関、地方自治体などの関係組織関係者4万人に宛てた水不足の可能性があるとする警告書簡を発送、諸般の準備に取り組むよう求めました。具体的な対応措置として   ①水温存措置 ②灌漑地域の縮小 ③放牧地域の管理強化 ④水供給の多様化 などを指摘しています。カリフォルニア州では水資源の80%が農業用であり、アメリカ最大の農業州であることから、その給水制限は農産物価格にすぐに響くため、消費者にとって大きな関心事です。そして水不足が深刻化すれば、一般住宅での節水強化策や給水制限といった厳しい措置が予想される非常事態宣言の発令も視野に入ってくるため、今後の展開に目が離せないわけです。当面は州知事による非常事態宣言には至らないとみられますが、今年11月から来年3月にかけての次の雨期の降水状況次第では「メガ干ばつ」(Megadrought)もありうるとの見方もあり、気がかりなところです。  

  • 第76回 

容疑者の「性依存」が犯行の動機か?
アトランタ連続銃撃事件。

 

    第76回 容疑者の「性依存」が犯行の動機か? アトランタ連続銃撃事件。  

    2021年03月23日 アメリカ101

     ジョージア州アトランタでアジア系女性6人を含む8人が犠牲となった連続銃撃事件(3月16日)から1週間も経たない22日、今度はコロラド州ボルダーのスーパーマーケットで銃撃事件があり、警官1人を含む10人が死亡しました。銃社会であるアメリカでは、もはや日常茶飯事にすらなっている大量殺人事件ですが、前者は、犠牲者の大部分がアジア系女性だったことから、昨年来アメリカ全土で増加しているアジア系市民に対するヘイトクライム(憎悪事件)なのかが注目されています。捜査当局は、白人青年ロバート・アーロン・ロング容疑者(21)を殺人罪容疑で逮捕したのですが、人種差別に基づくヘイトクライムであるかどうかの判断で決め手となる動機については、「性依存症」によるとの自供があったとしているものの、取り調べ中として明言を避けています。しかし、これまで断片的に報道されてきたさまざまなヘイトクライムとは比較にならない凶悪犯罪だけに、ジョー・バイデン、カマラ・ハリス正副大統領が揃ってアトランタを訪れ、アジア系市民との対話に臨んだほか、全米各地で抗議デモが展開されるなど大きな政治問題となっています。     アトランタでの銃撃事件は、アメリカで最大の韓国人街(コリアタウン)を抱えるロサンゼルスや、太平洋を隔てた韓国でも大きな波紋を広げています。それというのも、事件があった3カ所のマッサージ店での犠牲者のうち4人が51歳から74歳の韓国系の経営者や従業員だったからです。     韓国では近年、ラッパーで音楽プロデュサーのPSY(サイ)やヒップホップグループBTS(防弾少年団)がアメリカで大人気となり、さらには映画界でも、相次いで韓国の映画作品が話題を集め、昨年は「パラサイト 半地下の家族」が外国語映画として初めてアカデミー賞の最高名誉である作品賞を受賞しただけでなく4部門で受賞、また今年も、アーカンソー州に移住した韓国人一家を描いた韓国人スタッフ、俳優による「ミナリ」(雑草「セリ」の意)が作品、監督、脚本など6部門でノミネートされるなど“韓国ブーム”で意気軒高といったところでした。さらに今月には、バイデン政権の外交・軍事のトップであるアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が初の海外公式訪問の一環として日本のあとに韓国を訪れたこともあって、アメリカでの韓国の好感度が高くなっていたところへ、水を差すようなニュースになりました。     ニューヨーク・タイムズ紙によると、事件のあった一か所のマッサージ店「ゴールデン・スパ」では2011年から2014年の間に、警察のおとり捜査で少なくとも11人が売春容疑で逮捕されたとの調書が残されており、これらの店舗はいわゆる風俗店とみられています。容疑者のロングは、ローマ・カトリック教会に次ぐアメリカで第二の信者数を擁するキリスト教会組織である南部バプテスト連盟傘下の教会に属する熱心な信者で、「結婚以外のセックス」を禁止する教えに反して、マッサージ店を繰り返し利用していたとみられ、「性依存症」から脱するため教会のリハビリ施設に入所していたこともあったようです。警察の調べには、誘惑を断ち切るために犯行に及んだと供述、逮捕時には、フロリダのポルノ関連企業で同様の犯行に及ぶ途中だったとのこと。     犠牲者は男女2人の白人を除けば、残り6人はいずれもアジア系女性であり、「人種、宗教、身体障害、性的指向、人種、ジェンダーが動機の一部あるいは全部である、人間あるいは財産に対する犯罪行為」というFBI(連邦捜査局)のヘイトクライムの定義に該当するわけですが、アメリカが抱える諸課題の根深さを改めて示したものであることは間違いありません。  

  • 第75回
CAとNY、 二大ブルー・ステートの
州知事は任期を全うできるか

    第75回 CAとNY、 二大ブルー・ステートの 州知事は任期を全うできるか

    2021年03月16日 アメリカ101

      カリフォルニアとニューヨークというアメリカの二大ブルー・ステート(民主党が支配する州)の首長(州知事)が、任期を全うできるかどうかの境目にあります。カリフォルニア州のギャビン・ニューサムについては、第69回コラム「『夜の三ツ星レストラン』でイメージダウン」で取り上げましたが、そのリコール解任を求める住民投票が実施されるかどうかのヤマ場に差し掛かっています。そして他方のニューヨーク州知事アンドルー・クオモですが、昨年3月同州を直撃した新型コロナウイルス対策で、連日テレビ生放送で陣頭指揮をとる様子が伝えられ、対応に消極的だった当時のドナルド・トランプとの比較で、一躍メディアの寵児としてもてはやされました。だがこのところセクハラ告発が続き、高齢者養護施設での死者数を低めに発表した疑惑が浮上、八方ふさがり状態で、辞任は時間の問題という有様です。いずれも、順調にいけばホワイトハウス入りも視野に入るという政治家だっただけに、それぞれの政治生命に関心が寄せられています。    ニューサム知事は、コロナ禍での対応が後手に回り、しかも厳しい外出自粛規制を長期にわたり施行、レストランや商店、映画館、スポーツ・イベントなど、一般人が利用する施設への制限を必要以上に強化、長引かせたとして不興をかっていました。リコール運動は、コロナ禍以前に始められたもので、コロナ禍に便乗してリコール支持が勢いをつけています。前記のコラムで触れたように、ナパバレーにある世界的に有名なミシュラン三ツ星レストランで、自ら定めた自粛規制を破って友人と家族ぐるみで高級料理の会食に興じた事実が伝えられ、顰蹙を買いました。     最新のエマーソン大学による世論調査では、リコール投票が実施されれば、解任に賛成と答えた有権者が38%、反対が42%、未定が20%となっています。リコール投票実施には登録有権者の12%に相当する149万5709人に署名が必要で、3月17日が期限です。リコール運動主催者側の発表では、期限切れ1週間前の時点で集めた署名は206万人分で、無効署名を勘案しても必要数を上回ることは確実だとしています。     これまでニューサム知事は、リコール運動が共和党極右派が組織した根拠に欠けるもので、それにつきあう余裕はないとしてコロナ禍対策を先頭に、貧困対策、人種差別問題、環境問題など緊急課題に取り組む姿勢を前面に打ち出してきました。しかし予想を上回る署名が集まっていることに危機感を抱き、先週末から反撃キャンペーンを開始しています。今後は、集まった署名が有効であるかの審査が進められ、リコール投票実施の有無が決まる運びです。     一方のクオモ知事ですが、これまでに側近や支持者だった女性から、相次いで同知事によるセクハラや不適当な行動があったとする告発が続き、現在までに5人の女性が糾弾しています。クオモは、3期にわたり同州知事を務め、大統領選挙に出馬したこともあるマリオ・クオモの長男で、自身もビル・クリントン大統領の下で住宅都市開発長官を経験後、同州司法長官を経て、父親と同じ州知事となった政治家です。弟クリス・クオモはCNNのニュースアンカーです。また前妻ケリー・ケネディは、ジョン・ケネディ大統領の弟で司法長官を務め、大統領選挙中に凶弾に倒れたボビー・ケネディの娘で、一時は“ケネディ・クオモ政治王朝”誕生と噂されたこともあります。     今回のスキャンダルで名声は失墜、辞任を求める声が高まっていますが、15日にはジョー・バイデン大統領が「真相調査待ち」として辞任を求める考えのないことを明らかにして、一息ついたかたちであるものの、土俵際で爪先立ちでとどまっている感じです。