連載・コラム ロサンゼルスで暮らす人々

編集: Weekly LALALA - 2018年08月30日

学校、生徒、保護者が 二人三脚で取り組む教育

くじら学園園長/ プリスクール教師

ブライト 直子|Naoko Bright


 

 サンディエゴで生まれ、アメリカ人と日本人の両親の間で育つ子どもたちに日本語や日本文化を伝えたい。そんな思いを持つ保護者によって1987年に作られた幼児保育グループ『くじら学園』。保護者が持ち回りで教え、運営していた学園に、1998年に娘さんが入園、それをきっかけに『くじら学園』に関わるようになったブライト直子さん。2001年にはブライトさんは園長となり、学園は非営利団体として登録された。


 「園長になるからには自分も幼児教育について学ばなければと思い、Child Developmentの資格を取得しました」。それから資格を生かし、平日には現地公立学校のプリスクール教師としても従事。そしてこのプログラムがスペシャルニーズの児童を受け入れることになり、ブライトさんはさらにAutism Educational Certificateを取得した。


 「『くじら学園』に関わる前には自分が教育者になるとは思ってもみなかった」というブライトさんだが、今は自分がやればやるほど結果が出る仕事だと実感している。


 その後『くじら学園』の幼稚部を終える園児や保護者から「日本語の学習をもっと続けたい」という要望が増え、2011年に継承語日本語教育機関となる小学部を設立。「当学園には保護者からの日本語を継承していく指導がふさわしいと考えました」。ブライトさんをはじめ教員はカリフォルニア州立大学ロングビーチ校日本語科主催の継承日本語教師研修に参加し、その指導法に基づいて授業を行っている。


 「保護者主体で学園を運営し、家庭の日本語をどうサポートするかを伝えるのが学校。それは設立以来変わらない方針です。教師は保護者が子どもとどう関われば日本語が増えるのかというヒントを紹介しています。まずは日本語を話したい子どもの気持ちが大切。子ども自身が一生懸命伝えようとして自分で考えて伸びるのです」。そう話すブライトさんも日頃から子どもたちの声を聞き、耳を傾けている。


 「園児が学校を楽しんで、入学してから1年経って、できなかったことができるようになる成長を見るのが嬉しい。ここにくる園児や保護者の希望は、『日本の祖父母と話がしたい』から『高校のSAT Japaneseで高得点が取れる学力を身につけたい』まで様々です。当園では少人数だからこそ全ての園児や保護者の顔と要望がわかり、一人ずつに合わせた目標に向かってお手伝いができるのです」


 これからは自身の日米の経験を生かし、幼児教育のワークショップを開いていきたいと話すブライトさん。「保護者は教育といえば勉強がまず気になりがちですが、友達と一緒に楽しんで遊ぶ、人を思いやる心を持つなど、社会性があり、情緒が安定している子は勉強もできるようになります。そういったエピソードを伝えていきたいですね」。

土曜日はサンディエゴの日本語学校(幼稚園・小学校)『くじら学園』の園長、平日はHead Startでプリスクール教師をしているブライト直子さん。 http://kujiragakuen.org

 

3月には『くじら学園』の卒園式が行われた。(左がブライトさん)

ブライトさんの『くじら学園』運営のきっかけとなった娘さんをはじめ、たくさんの卒業生が現在日系コミュニティで活躍している(右がブライトさん)撮影:Kaori Devine

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    ぽわん、ぽろん、ぽろろん。まるみを帯びた深い音色。スタジオに続く木製扉の前で耳を澄ませて立ち止まった。 マリンバという楽器をご存知の方はどれくらいいらっしゃるだろう。マリンバは、いわゆる木琴の一種。木琴の音は固く乾いた音であるのに対し、マリンバのそれはやわらかい。   マリンバ奏者の高田直子さんのスタジオを訪れた日は、空には雲ひとつなかった。開け放たれたドアの向こうにマリンバが見える。想像よりもずっと大きい。ビブラフォンもドラムもピアノもあった。光が注がれる楽器はどれも本当に神々しい。   マリンバはピアノよりも鍵盤数が多く感じたので尋ねてみると、すぐさまピアノの前に座り「そんなことないです。ほらね」と慣れた手つきで弾いてくれた。 なるほど、マリンバとピアノはまったく違う楽器にみえるが、考えてみれば同じ鍵盤打楽器だ。たたくことで音を出す。   出会いは8歳。母親と一緒に行った雛祭りコンサートだった。「最初は大きな家具だなって(笑)そこで聴いたのは『熊蜂の飛行』でした」 マリンバに出会ってしまった直子さんは「習いたい」と親に頼んだが、最初の頃は一時的なことだろうと相手にされなかった。けれども変わらぬ情熱に母親は「1回だけね」と約束して教室に連れて行ってくれた。   その1回が2回になり3回になった。そのうちに忘れるだろうと思った親の期待とは裏腹に、彼女の熱意は薄まるどころかどんどん増した。 父親は、新聞紙を切って音の出ない即席マリンバを作ってくれ、彼女はそれで練習した。 遂にマリンバを買ってもらったとき、あまりの嬉しさにマリンバの下で寝たほど。   先生についてめきめきと力をつけた彼女は、11歳で初めて舞台に立った。しかし中学の時に一度マリンバを辞めている。「舞台に立って以降は、周りからプロになるの?どうするの?と何度も聞かれ、それがすごく嫌だったんです」   早稲田大学の心理学科に進み、一年間の交換留学でカリフォルニア大学ノースリッジ校(CSUN)を訪れたことがその後の運命を大きく変える。早稲田を中退し、CSUNの音楽学科に編入し、再びマリンバと向き合う日々が始まったのだ。   「一日6時間、5年間集中すればプロになれる」と信じ、昼夜問わず練習に身を捧げた。 当時の自分の言葉をどう思うかと聞いたら「生意気だったと思います」と笑った。   2002年、ニューヨークで開かれたヤング・コンサート・アーティスト国際オーディションで優勝したことを機にプロとして始動。「20代のときは仕事を選べなかったけど今は選ぶことができて幸せ。子供と過ごす時間が何より大事です」   交換留学初日に出会ったご主人との間には2人の可愛い子供がいる。「才能があるのに子育てでやめてしまう人を私はもったいないと思う。 ママになっても自分の才能を活かしてほしい」彼女の演奏に勇気をもらう理由がわかった気がした。  

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