連載・コラム らららトピック

編集: Weekly LALALA - 2020年07月28日

コロナで急増

カリフォルニアを脱出する人々

どうやって決心したの?

「残り続ける夫VS子どもの学校」、「日米の二重家賃問題」、「LAでのビジネスどうする」、「人気急上昇!田舎暮らし」

カリフォルニア州保健当局は、これまでに同州で確認された新型コロナ感染者数が累計で41万3576人となり、ニューヨーク州を抜いて全米トップになったと発表しました(7/23時点AFP通信)。

保健当局は、人数の比較にあたってはカリフォルニア州の人口が全米最多の4000万人弱で、ニューヨーク州の2倍以上に相当する点を考慮しなければならないと強調しています。その2日後の25日、フロリダ州がニューヨーク州を上回り感染者数2位に(7/25時点)。流行の中心は東部から南部や西部に移っており、経済活動再開の見直しを迫られる州が続出しています。

 

米国政府が外国企業の駐在員などへの一部の就労ビザの発給を年末まで停止したことを受け、駐在員の赴任などに支障が出るとした日系企業が300社以上にのぼることが、ジェトロ(日本貿易振興機構)の調査でわかりました。具体的な影響としては、▼「赴任予定者が着任できず、現地事務所の人員が不足している」、▼「日本の本社も含めた異動の計画が狂った」といった実例のほか、▼「いずれは事業規模の縮小を検討する必要がある」など、アメリカでの事業の先行きを悲観する意見も寄せられており、日系企業の間で懸念が広がっている実態が明らかになっています。

 

コロナ禍によって人々は移動を余儀なくされています。日系コミュニティ内の引っ越し状況を米国ヤマト運輸に取材をすると、「突然他州への移動は多くありませんが、突然帰国のケースは多くありました。業種は様々ですべての会社に今回のことはあてはまっているようです。また学校が閉まっており、日本は再開に兆しがあるということで、これを機にご家族だけ帰国される方も何組かいらっしゃいました」という現状を話してくれました。働く場所、暮らす場所、学ぶ場所を変えざるを得ない5つのケースを取材しました。


 

ケース1:ビジネスチャンスがシカゴに!

LA→イリノイ州

池端 健太さん

Tsujita LA  創業メンバー

 

イリノイ州に直営店3店を構え、カリフォルニア、メキシコシティにも直営・関連・協力店あり。店舗家賃高い×人件費高い×コロナ打撃大きいLAから中西部へ

 

 「今の家より広いから、鬼ごっこと隠れんぼできるね!」って、6歳の長男に新居の写真を見せたら、嬉しそうに言うんですよ(笑)。確かに今回のコロナの影響は大きかったですが、シカゴへの移動は家族との時間を保つためにも決めたことです。2011年からLAに住んでいますが、2019年から各国・各州に出張ベースで行き来し、ビジネスの比重がカリフォルニア以外が多くなり、家族との時間が少なくなりました。そこで、コロナをきっかけに家族会議をして、家族の時間を保てるようにビジネスと住居の拠点をシカゴ郊外に決めました。自分が移動を考え始めたのは今年の4月で 、家族が実感したのは6月頃でしたね。シカゴに決めた理由は、住んだことがなかったことと、ビジネスがイリノイ州にあったから。実際にビジネスを展開してみて人(層)が良かったし、LAよりリビングコストが安い。LAの家賃は高いところが多く、アメリカ全土からみても人件費が高いですからね。何よりもシカゴには四季があり、子どもがより生きる術を学べるのではとも思いました。

 

 今年2月17日にオープンしたChicago Ramenは地元雑誌『Chicago Tribune』でシカゴ内のレストランで一番の賞をいただき、1日350人のお客様にご来店いただきました。この地での手応えを感じています。

 

 日本で『つじ田』というらーめん屋で働き出し、オーナーの意向でLAに来ることができました。2019年5月に退職後はパートナー達の協力の元、様々なレストランに着手しました。このシカゴの地で、自分のビジネスを新たな地で確立すること、レストランとして絶対的に認知されることにチャレンジします。アメリカでビジネスを持ち、家族が生活できていることに感謝して、自分なりの恩返しや生き方を続けていけたらと思います。


ケース2:コロナ落ち着くまで避難

LA→日本

メーカー駐在員妻

ロサンゼルス在住 T.Kさん

 

「残り続ける夫VS子どもの学校」問題は根深い。夫をとるか、子どもをとるか、私の心は引き裂かれる。メンタルや環境も大きく変わる引っ越しは、もはや人間ドラマ。

 

 帰りの便は期日を自由に変更できるチケットに敢えてしたんです。今回日本に帰国するにあたって、子供が夏休みの間だけの「一時帰国」にするか、アメリカに戻る日を特に決めない「一定期間の帰国」にするかは、実際に日本で子供を学校に通わせてから決めようと思っていました。主人は会社命令でLAから仕事を続けることになりましたので、日本に帰ったのは私と息子の2人。帰ることにしたのは現地校のスクールイヤーが終わったから。少なくとも次年度が始まるまで、息子を実際に学校に通わせてあげたいと思いました。息子は今年(日本では)ピカピカの新一年生。学校に行けない息子を見ていると可哀相でならなかった。感染者数の増加を鑑みるに学校再開が危険なことはわかりますが、駐在組の私たちにとって子供がアメリカの学校を体験できることが大きなメリットだと思ってそもそも赴任に帯同してきたので、フルリモートではそのメリットが失われているのは事実です。

 

帰るときは2つの意味で怖かった。1つ目は移動感染。「アメリカ在住〇〇企業の家族、東京にコロナ持ち込む」のようなニュースが出た場合のことを考えてぞっとしたんです。私の個人的な勝手な行動で主人に迷惑をかけることはしたくはありません。2つ目はいじめ。外国から戻った子供が学校で心ない言葉を浴びせられているニュースを見て、胸が痛みました。「コロナが来た」「恐い」といった言動を取られた時の息子の心境を考えるとつらすぎて。しかし、運がよかったのか、どちらも恐れていたことは起きずにおわりました。私たち自身健康ですし、近所に住む両親も変わりありません。子供の学校生活は非常に充実しています。やっぱり子供は実際に交流することが大事ですね。

 

が、問題は主人です。夫は駐在員なので、もともと州外や日本への出張が非常に多く、また日本からお客様が来たりなど、非常に忙しくしていました。しかし自粛以降は自宅から仕事をしていますので、完全に孤独です。日本との行き来も出張もまったくない。今や家族もいない。誰とも会わない生活を続けていると心が折れるのでしょう。どうも鬱っぽい

 

 夫のことも心配ですし、アメリカに戻らなければならないと思うのですが、子供の学校のフルリモートが決まった以上、正直なところ日本を離れてもう一度感染大爆発の危険なLAに戻りたいとも思わないのです。非常に悩んでいますが、私が日米を行き来するしか手立てがないのではないか、というところに落ち着いています。ふた月に一度くらい子供を両親に預けて、私がLAに行き、夫のケアをする。2~3週間程度でまた日本の家に戻ってくる。子供と夫、両方の利をとるならば、それしか方法がないように思えます。現地校の籍は置いたままにするつもりです。時差があるので厳しい状況になるでしょうが、ロサンゼルスの駐在生活は実は去年から始まったばかりで、子供の英語力向上は目標でした。日本の学校に通いながら、現地校のオンライン授業も、できるところまでやってみるつもりです。


 

ケース3:田舎暮らしに挑戦

LA→コロラド州

ゲームメーカー

元サンタモニカ在住 S.Aさん

 

きっかけは「騒音問題」。アパートかつステイホームで遊び盛りの子どもをのびのび育てることに疑問を感じたのがきっかけ。仕事場が自宅となった今、リビングコストの高い場所に住み続ける意味はない。

 

 大学でコロラドに住んだことがあるので土地勘はありましたし、友人もいました。ロッキーマウンテンが見えて、土地が安く、自然豊かで、時々昔の友達に会いにコロラドに行ったりしていました。サンタモニカは都会で、日系スーパーも近い、遊びに行くところも多い、職場も近いの三拍子で、好きな場所でした。もし僕が夫婦2人の生活だったなら、サンタモニカを選び続けていた可能性はありますね。

 

ステイホームとなって以降、自宅から仕事をすることになりました。そしてプリスクールが閉鎖となったので娘も家にいる生活になりました。そしたらどうなったか。アパートの管理会社から「お宅の騒音はうるさい。気を付けてくれ」と何度も言われるようになったのです。遊びたい盛りの娘が走ったり、足をどたどたとするたび「しっ。だまって」と言うのがどれほど辛いか。外に行くこともできない、家にいるしかない、ストレスのたまる娘をみて、僕たち夫婦は悩むようになりました。アパートは両隣にも上下にも人がいる状態で、しかも家もさして広くない。ここで来年になってもおよそ収束することが難しそうなコロナ生活を続けることが非常に困難だと判断したのです。家族全員の心の健康を優先して、土地勘のあるコロラドに引っ越すことを決めました。仕事はステイホームなので、時差は一時間ありますが、サンタモニカからしてもコロラドからしても幸い問題はありません。

 

引っ越してきて本当によかったと思います。ここは一軒家で、どれだけ飛んだり跳ねたりしても誰も文句を言ってこない庭もあるので、自由に走り回ることもできます。娘と植物を植えることもできますペットも飼えるカリフォルニアより感染者も圧倒的に少ない家賃も安い。狭い空間で育児が辛そうだった妻も今は笑顔です。空間の広さは精神の余裕に直結します。コロナで少なくとも僕は無欲になりました。欲しいものがすぐに買える都会で生活することに魅力を感じなくなり、自然と向き合いながらゆっくりと生活をしたくなった

 

コロナが終息したとして、仮に会社に戻る命令が下った時、LAに戻るかどうかもう一度判断しようと思っています。僕はそのときこの地で転職するかもしれないし、はたまた買った家を売って再び戻ろうと思うかもしれないし、それはわからない。その時その時でいちばんベストなことを判断するまでです。


 

ケース4:アメリカ撤退

LA→日本

食料品輸出業/飲食業

サウスベイ在住 I.Sさん

 

日本の商社で米国からの食料品の輸入を担当後、米国で独立。いくつもの経済不況を乗り切った日本向け食料品輸出業のパイオニア。食品の知識をもとにあらゆるレストランを手がけてきた。

 

アメリカに移住して30年、この新型コロナのようなパンデミックを体験したことはありません。毎日増え続ける感染者の数や、米国人のマスク論争などを聞いていてコロナ禍が長引くと感じ、私自身、持病がありコロナに感染すると死亡リスクが高いという懸念がありました。今回、貿易業及び飲食業の整理がついたので、日本への帰国を決めました。帰国を考え始めたのは、LAがロックダウンになった3月下旬頃だったでしょうか。将来、終の住処は日本と考えていましたが、時期がこんなに早くなるとは思っていなかったですね。 

 

 過去には、アメリカ同時多発テロ、リーマンショックなど、社会をゆるがす事件が起きましたが、私は食料品の輸出だったので直接影響したことはありませんでした。一番大変だったのは、タイを震源としてアジア各国に伝播した1997年のアジア通貨危機でした。貿易業で一番大変なのは、代金の回収です。輸出相手国が、ある日突然に国として破産するわけですから。私の場合は韓国の破産で、輸出代金(米国ドル)の回収が不可能となり、また先物契約分の輸出も不可能となってしまいました。幸いにも米国政府の速やかな対応で(農産物輸出保険の発動で)全ての代金を米国政府の保証で指定銀行から回収することができましたが、この新型コロナは訳が違います。アメリカでのビジネスは完全に閉めますし、コロナ禍が収まらない限りビジネスを起こすことは考えられないです。

 

このコロナ被害に対して、国や自治体から補償措置がとられていますが、まったく足りていないと思います。私が携わった飲食業の場合は家賃の補助がほぼありません。お店の閉店及び、一部使用不可の行政命令を出しておきながら家賃の一部しか補償がない。罰則規定ありの行政命令を出す以上、それに見合った補償は絶対にすべきだと思います。


 

番外編:脱出を諦めた

LA→悩んだもののそのままLA

夫がソフトウェア企業のLAグループ企業に転籍、妻

サウスパサデナ在住 A.Eさん

 

日本で買った家はすでに売却。もう一度、日本で生活を立て直すか。それともアメリカを出られない夫とともに運命をともにするか。家族の分断問題、日米の二重家賃問題。

 

 コロナの影響で、個人の判断にせよ、会社命令にせよ、日本に帰っていく友達を見送りながら、心はずっと複雑でした。私たちが日本の家族や友人に、送り出してもらったのがちょうど1年半前。そんなわけで1年半しか経っていないアメリカ生活で、コロナ禍であっても日本に戻ることはもともと考えてはいませんでした。覚悟をもってアメリカに来たわけですから。夫は、日本の企業から、グループ会社のアメリカの企業に転籍したので、戻る場所がないわけではないですが、基本的にはアメリカにそこそこ長い間、骨を埋めるつもりで来ています。私たち家族もその気持ちを尊重して帯同してきました。

 

 けれども問題は複雑です。当たり前ですが、来て間もないこともあり、子供はまだ英語を体得していません。その半端な英語力で、英語で現地校のオンライン授業を受けることがどんな意味をもたらすのか。何ももたらさないんです。基礎がないから、内容がわからず、ほとんど何も身についていかない。生身の体で学校に通っているときは、まだよかった。生きた英語を学べますし、先生や友人との交流の中で揉まれて学んでいく。けれどもオンラインになるとどうでしょう。勉強とはもともと言語を習得することが目的ではありません。何がしかの言語を通して、対象となる学問を学ぶ行為です。しかしながら、英語力のない状態でオンラインで授業を受けても、意味をつかむことすらままならないわけですから、その勉強をどんどんミスしていきます。私はそれが気になって仕方ありません。日本の学校に行った方が、まだこの子たちにとって意味があるのではないかと思ったりもします。

 

 一方で簡単に日本に帰れない理由は、夫以外にもあります。家問題です。日本で買った家は、渡米前に売却しました。ですから帰国して生活をするには、一から家具を買い、住居を決め、という作業が必要で、ものすごい費用と労力がかかります。日米両方の家賃、両方の生活費を夫の収入だけでやりくりできるのかという計算もしなければなりません。私たちはもともと埼玉から来たのですが、実家は地方なので事態は複雑で、戻るなら土地勘のある埼玉がいいのですが、そうすると頼る人は誰もいないわけです。じじばばに預けて買い物に行くなどということも私の場合できません。さらに両親の住む実家に戻ることもちょっと難しいです。世代が違うので、一緒に暮らすとお互いに疲弊します。

 

 子供たちが学校に行けないことの影響は計り知れず、こちらに留まるにしても学校再開の見通しは立たないのですが、「今は家族一緒にいる」ことを選ぼうと思っています。


 

 

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    2020年07月07日 らららトピック

    6月22日、トランプ大統領は新型コロナ感染拡大収束後の景気回復に向け、米国労働市場にリスクをもたらす可能性のある特定の移民および非移民の受け入れを一時的に停止する大統領令に署名しました。米国内で失業者が急増している状況下、政権が米国人の雇用を最優先することを目的として発令されています。この発令により、特定の移民の入国を一時停止する大統領令10014(グリーンカードの発給手続きを60日間停止する)が2020年12月31日まで延長されました。   今回の大統領令は、次のカテゴリーの非移民の入国を一時的に停止します(対象期間は2020年12月31日まで、延長の可能性有り)。対象となっているビザは、H-1B、H-2B、J、L これら取得者とその帯同家族。この大統領令によって現在有効なビザが取り消されることはありません。   また、次のカテゴリーの人は対象外です。米国市民、米国永住者、または大統領令の発効日に米国内に滞在していた外国人、有効な非移民ビザ、または移民ビザを保持している外国人は対象外。大統領令に含まれていない非移民ビザ保持者(E1、E2、E3、TN、F1=学生)も対象外。米国の食料品供給に関わるエッセンシャルワーカーも対象外、国務長官、国土安全保障長官、またはそれぞれの指名者が入国が国益にかなうと判断した外国人も対象外です。   対象となっているビザとなっていないビザにはどんな差があるのでしょうか。その決定が下されるに至った背景は何でしょうか。米国人の雇用を最優先という大枠の理由はあるにせよ、なぜこれらのビザが選ばれたのか理由があるはずです。多くの情報が氾濫していますが、こういう時は一次情報にあたることがもっとも重要です。その根本となっているホワイトハウスの公式発表をチェックしてみました。(7月3日時点)   大統領令のタイトルは? 「Proclamation Suspending Entry of Aliens Who Present a Risk to the U.S. Labor Market Following the Coronavirus Outbreak」 —コロナウイルスの大流行後の米国の労働市場に影響をもたらす外国人の入国を停止する宣言」となります。   対象となっているビザは?  H-1B(アメリカで就労する専門職用のビザ)取得者とその帯同家族   →専門的な職業やIT企業などの技術者に活用されている。  H-2B(短期の非農業季節労働者用のビザ)取得者とその帯同家族   →あくまでも農業や養殖、魚介類の加工などの共有網に携わる人は例外とされていることがポイント。レストラン、ホテル、クラブなどの就労は例外とはならないため注意。    L-1(企業内転勤者ビザ)とその帯同家族   →海外からアメリカに転勤する幹部社員向けとされている。    J-1(交流訪問者用ビザ)取得者とその帯同家族   →インターン、研修生、教師、キャンプカウンセラー、オペア、サマーワーク&トラベル(SWT)プログラム。※オペアとは、外国にホームステイしながら子どもの面倒をみる人   のこと。大学教授や学者などは対象外。   トランプ大統領の狙い  ホワイトハウスの公式発表によると「労働長官と国土安全保障長官が非移民プログラムを検討した結果、現在いくつかの非移民ビザカテゴリに属する労働者が入国していることが、現在の景気回復期に米国の労働者の職を奪い、不利な立場にするリスクをもたらすことがわかった」と述べています。   ホワイトハウス発表の大統領令からよみとれる背景  米国の失業率は2020年の2月から5月の間にほぼ4倍になり、労働統計局によってこれまで記録されたなかでも最も極端な失業率をうみだしました。実に何百万人ものアメリカ人が仕事を失っている状態です。    アメリカ人労働者は、アメリカで一時的に仕事をするために入国した何百万人もの外国人と仕事を求めて競い合います。それら外国人はしばしば配偶者や子どもを帯同し、配偶者や子どもである彼らも仕事を得るためにアメリカ人労働者とポジションをめぐって競争することもあります。通常の状況ではこういった行為は経済に恩恵を与えます。しかし、新型コロナ大流行による経済収縮という異常な状況下では、外国人労働者はアメリカ人労働者にとって大きな脅威となっているのです。   なぜ、H-1B、H-2B、L、Jが選ばれることになったのか? 若いアメリカ人の5月の失業率 16~19歳で29.9%、20~24歳で23.2%  2020年の2月から4月までの間に、H-2Bビザの外国人と競合する場所で働くアメリカ人はこの産業で1700万人以上の雇用が奪われ、またH-1BやLビザの外国人を求める産業では、同期間に2000万人の米国人労働者が職を失ったとされています。特に、Jビザ申請者と競合する若いアメリカ人の5月の失業率はことのほか高く、16~19歳で29.9%、20~24歳で23.2%となっています。 したがって、H-1B、H-2B、J、Lの非移民ビザ制度による追加労働者の入国が、新型コロナの大流行による異常な経済混乱の影響をうけた米国人にとって、雇用機会に大きな脅威となっていると結論付けました。   どんなアメリカ人が職を得にくくなっているのか?  大統領令10014で述べられていましたが、過剰労働供給は、特に「雇用されるか、失業してしまうか」という狭間にいるアメリカ人労働者にとって問題となります。彼らは通常、景気が拡大される時には最後に、景気が後退する時に最初にリストラの対象となる傾向があります。近年これらの労働者は、アフリカ系アメリカ人、マイノリティー(少数民族)、大学を卒業していない人、障害をもつアメリカ人などが目立ちます。   トランプ大統領の結論  大統領令は以下のように記されています。「特に国内の失業率が高く労働需要も落ち込んでいる現状において、アメリカの移民制度の運営にあたっては、外国人労働者が米国の労働市場に与える影響について留意する必要があります。米国経済が、経済収縮の終了を前提に、収縮前の経済生産に戻るには数ヶ月、安定的な労働需要を回復するには、さらに数ヶ月かかる可能性があります。以上のことから私(大統領)は、2020年12月31日までの間に、特定の外国人を移民、および非移民として入国させることは、米国の利益を害すると判断しました」   この大統領令によって、予想される雇用人数は?  今回のビザの新規発給停止により、52万5000人分の雇用が生み出されると述べています。   入国が国益にかなうと判断した外国人とは?  これに関しては、国務長官、労働長官、国土安全保障長官が基準を策定するとされ、①米国の防衛・法執行・外交・安全保障にとって重要である場合、②新型コロナ感染者の治療に従事する場合、③新型コロナに対処するための施設における医学研究に関与する場合、または④米国の緊急的かつ継続的な経済回復を促進するために必要な場合、という例示がされています。   医療と農業関係は免除になっていることから読み取れること  アメリカで暮らす人々が飢えてはならない。グローサリーには食料が充分に行き渡っていなければならない。ゆえにそのための人的資源は必要不可欠だから、農業従事者、食糧供給者に携わる人は制限されるべきではないという明確な意志が読み取れます。   また国難ともいえる新型コロナの感染者への治療や、新型コロナにおける医学研究に携わる人々はアメリカの国益に合致するために制限されるべきではないという明確な意志も読み取れます。   一方では、反発も 2019年に、H-1Bの発給数がもっとも多かった企業「Amazon」  2019年に、H-1Bの発給数がもっとも多かった企業がAmazonです。Amazonの広報担当者は「我々は、政権の近視眼的な動きに反対します。高いスキルをもったプロフェッショナルを入国させず、経済回復への貢献を妨げるのは、アメリカの国際的競争力を危機にさらすものです。高いスキルをもった人間向けのビザの価値は明らかで、我々は製品・サービスを革新するために世界から集ってくれる従業員に感謝していますし、アメリカ経済を強化していく取り組みを続けていくつもりです」と述べています。   またAmazonと同様にH-1Bを活用しているGoogleの広報担当者は「海外からの移住者は、技術的躍進を促して新たなビジネスや雇用を生み出してくれただけでなく、アメリカ人の生活を豊かにしてくれました。アメリカが継続的に成功できるかどうかは、世界の優秀な人材が企業に来てくれるかどうかにかかっています。特に今、我々がアメリカ経済の復活に貢献するためにそういった人材が必要なのです」とコメントしています。   ホワイトハウスウェブサイトの該当ページは以下 https://www.whitehouse.gov/presidental-actions/proclamation-suspending-entry-aliens-prsent-risk-u-s-labor-market-following-coronavirus-outbreak/    

  • H-1Bビザ、H-2Bビザ、Jビザ、Lビザ

年内発給停止

教えてください!ビザ申請や延長方法、アメリカからの出入国。

どうしたらいいですか?   【後編】

    H-1Bビザ、H-2Bビザ、Jビザ、Lビザ 年内発給停止 教えてください!ビザ申請や延長方法、アメリカからの出入国。 どうしたらいいですか?   【後編】

    2020年07月01日 らららトピック

    6月22日、トランプ大統領は新型コロナウイルス感染拡大により影響を受けた米国民の雇用を保護する目的で、一部の非移民ビザによる外国人の入国を年末まで停止・制限する大統領布告に署名しました。対象となるビザは、■特殊技能職(H-1B)、■熟練・非熟練労働者(H-2B)、■交流訪問者(J)、■企業内転勤者(L)。   今回の大統領布告は、4月22日に発表された移民ビザ取得希望者を対象とする60日間の入国停止措置を12月31日まで延長した形となります。   「ビザが年内に切れるのにどうすればいいの?」、「アメリカから日本に帰れないの?」、「グリーンカードのプロセスはどうなるの?」など、多くの声が聞かれました。そこで今回は移民法弁護士の瀧 恵之先生にお聞きしました。   Q. グリーンカードも停止されたと聞きましたが、どのような対応が考えられますか。   《ポイント!!》グリーンカードの制限の延長を発表しましたが、グリーンカードの申請自体が停止されたわけではありません   【雇用を通してグリーンカードを申請 】 A. トランプ大統領は、2020年4月20日、アメリカ国民の雇用を守る為、グリーンカードの申請手続きに60日間の制限を加える発表を行った後、2020年6月22日にH、J、L等のビザの制限に加えて、上記グリーンカードの制限の延長を発表しました。    ここで重要なことは、グリーンカードの申請自体が停止されたわけではないという事です。以下、雇用を通して申請する場合、米国市民との結婚を通して申請する場合の各々に関して説明します。    まず、雇用を通してグリーンカードを申請する場合に関してですが、多くの場合は、手続きのステップは、大きく次の4つ分かれます。   ①募集広告 ②労働局の審査 ③ I-140(主に会社の審査) ④ I-485、或いは、Consular Process(主に申請者の審査)です。   ④ のI-485 と Consular Process の違いは、簡単には、I-485 がアメリカの移民局で面接を受ける申請方法で、Consular Process が日本のアメリカ大使館にて面接を受ける方法です。ここで、今回の制限の対象となるのは、④の Consular Process を選んだ場合です。I-485 の申請を選んだ場合は、一旦 I-485 の申請を行ってしまえば、仮に面接が遅れることによりグリーンカードの発行が遅れたとしても、その間、I-485申請後に発行される就労許可にて就労を続けることができ、一時渡航許可によりアメリカからの出入国も可能になります。従って、実質的にはグリーンカードがあるのとほぼ同じ状態で面接を待つことになるので、今回の規制によって大きな影響を受ける事はないとも言えます。   また、仮に、④ の Consular Process の手続きを選んだ場合でも、日本のアメリカ大使館での面接の通知が来るまで、アメリカに滞在している場合は、H-1Bその他のステータスにて滞在し、面接の通知が来るのを待っていれば良いという事になります。   【結婚によるグリーンカード申請】 次に、米国市民との結婚によりグリーンカードを取得する際には、日本にて手続きを行う方法、及び、アメリカにて手続きを行う方法があります。    日本にて手続きを行う場合には、最初に、米国市民である配偶者が、アメリカの移民局にI-130 という書類を提出します。この手続きは、現在5~7カ月を要しています。このI-130の申請が認可された後は、ケース(ファイル)が、National Visa Center に移され、ここで申請者(あなた)の資料を提出することになります。その後ケース(ファイル)が日本のアメリカ大使館に移され、面接となります。従って、今から手続きを開始したとしても、面接は、約1年~1年半後になりますので、その時までにアメリカ大使館が面接を行える状態になっていれば良いことになります。    アメリカにて手続きを行う場合は、申請書を移民局が受け取った時点で、継続してアメリカに滞在することが出来るようになります。その後、就労許可、一時渡航許可が発行されますので、仮に、面接が遅れたとしても、それまでの間、配偶者の方と一緒に暮らすことができ、働くことも、アメリカからの出入国もできるようになります。従って、この場合もグリーンカードを保持しているのとほとんど変わらない状態で面接を待てば良いということになります。   Q`.    今後の見通しとその対策について教えてください。   A.  今後の見通しは、正直分かりません。誰にも分からないと言っても過言ではないと思います。重要なことは、将来のことは分からなくとも、現状に対する対応策は往々にして存在する場合が多いということです。上述しましたように、ビザに規制が掛かっているだけで、ステータスへの規制が掛かっていないのであれば、ステータスを延長すれば、アメリカからの出入国は出来ないまでも、アメリカでの就労は保持・継続することができます。多くの方が同意されると思いますが、移民手続への規制は、(雇用問題を含む)アメリカの経済と連動していると考えます。アメリカは国力がある為、経済の悪化が早い場合でも、その回復も早いと言えます。近い過去の例で言えば、リーマンショック後もわずか2年という速さでアメリカは経済回復を達成しました。ビザ、グリーンカード等の手続きへの規制もこの経済の動きに沿って規制・緩和がなされると考えます。従って、アメリカの経済が回復する近い将来まで、現状に対する最良の対応策を講じることが重要になります。上記のステータスの延長による手段以外にも、上述しましたように、日本のアメリカ大使館が面接を行っていなくとも、どうしても必要な場合は、緊急面接を行ってもらう手段も考えられます。グリーンカードの面接が遅くなる場合でも、申請の過程で、就労許可、一時渡航許可を取得することが出来れば、働くことも、日本に行くこともできます。個々の事案に応じてその他の多くの対応策が考えられます。雇用問題を含めたアメリカの経済が回復し、規制が緩和される時まで、うわさに振り回されるのではなく正確な情報を入手し、適切なアドバイスを受け、最善の対応策を見出すことが必須だと考えます。   (筆者からのコメント) 今回の記事は、2020年6月25日時点での得られる情報をもとに執筆したもので、その後に内容が大きく変わる可能性も大いにあります。この記事を読まれている際には、既に大きく状況が変化している可能性があることもご了承頂ければ幸いです。