Vol.22 「見栄」と「嘘」は禁物(Weekly LALALA 708号掲載)

人生も商売も、出る杭うたれてなんぼやで。 連載 Vol.22 吉田潤喜

「見栄」と「嘘」は禁物

駆け足でビジネスの体験談を話してきたが、ここで少し立ち止まって、今回は経営者としての私のポリシーについて書いてみよう。私が社員に対して求めるのは三つだけである。それは「見栄を張らない」、「他人の嫌がることをしない」、「嘘をつかない」ということだ。この三つには私自身への戒めも含まれている。ソースが少し売れ始めた頃、私は中古車とはいえ、ベンツを乗り回していい気になっていた。
思い出すと全く恥ずかしい。少しばかりのカネを手にして有頂天になっていた私は、ついつい見栄を張ってしまっていた。ビジネスの面でもラジオコマーシャルを始めるなど、同じように背伸びをしてしまったこともあり、倒産の危機という形でしっぺ返しを被った。そして結局、義父の援助を仰ぐことになったのはすでに述べたとおりだ。 他人の嫌がることをしないというのは、潰すか潰されるかのビジネスの世界では難しいことかもしれない。しかし、顧客に喜んでもらい、取引先と一緒に成長しようという心構えがなければ、長続きするビジネスは望めないのではなかろうか。それと同様、社員に嘘をつかれれば、会社が大きな損害を被ることにもなりかねない。
以上の三つのことを守れない社員は、私はたとえ幹部であろうとクビにしてきた。元大手スーパーチェーンのバイヤーで、ヨシダフーズの副社長にスカウトしていたM氏もその一人である。九〇年代の半ば、我が社でドッグフードの開発に乗り出したことがあった。自社のソースを使ってのグルメなドッグフードである。犬に喜んでもらえたまでは良かったのだが、周りのソースの部分を舐めるだけで、フード自体を食べてもらえないという問題が起きてしまった。今振り返ってみれば笑うことができるエピソードであるが、結局は失敗に終わるドッグフードのプロジェクトを担当していたのがM氏だった。 私は彼に商品化の失敗を責めたわけではない。私自身そうであるように、誰にも失敗はつきものだ。私が許せなかったのは、むしろ彼のやり方だった。 ペットフードのショーに参加した際のこと。M氏は何を考えたのか、サンプルを入れるプラスチックの容器を二万個も注文してしまった。サンプルの容器は、せいぜい数百個もあれば足りるのだ。にもかかわらず、おべんちゃらを並べる業者に乗せられ、いい気になって彼は見栄を張ったのだった。 ビジネスにおいて、「プライド」をもつことは大切だ。しかし、「見栄」を張っても何のプラスにもならない。いっけん両者は似ているが、実はまったく異質なものなのである。
私がM氏をクビにする決断をしたのは、自分の過ちに気づいた彼が、部下を巻き込んで隠れて在庫処分しようとしたからだ。このように問題が隠蔽されれば、会社に与える損害がどんどん膨らんでいく場合だってありえる。私が社員の嘘を恐れるのは、こうした理由からなのである。

吉田潤喜
1949年京都市生まれ。69年渡米、ワシントン州とオレゴン州における空手を使った警察逮捕術主席師範を経てヨシダフードを設立。醤油ベースのソース「ヨシダソース」が爆発的ヒットに。現在グループ会社の会長兼CEO。2003年、インテルやAOLなどと並び、米国の優秀中小企業家賞を受賞し殿堂入りを果たすとともに、2005年のニューズウィーク日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。

このコラムは『人生も商売も、出る杭うたれてなんぼやで』(幻冬舎アウトロー文庫)から抜粋・編集しています

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