Vol.20 リコールにどう対応したのか(Weekly LALALA 706号掲載)

人生も商売も、出る杭うたれてなんぼやで。 連載 Vol.20 吉田潤喜

リコールにどう対応したのか

私が経験したソースのリコールについて書いておこうと思う。ゴルフ場の開発に乗り出した九〇年、私は現在の場所にソース工場を移転した。その直後、店頭に並ぶソースに問題が発生した。
二度目の工場移転によって、生産能力はそれまでの一日一万本から七万本へと高まった。ソースの種類もオリジナルの「ヨシダ・グルメソース」に加え、「ハワイアン」「チャイニーズスイートサワー」と増えた。このなかで問題がおきたのが、ハワイアンソースだった。
ある日、ソースを売ってもらっていた大手スーパーチェーンの担当者からこんな電話があった。
「ソースの匂いがヘンだ。味もいつもと違うぞ」
電話を切ると、私は青くなって店舗に直行した。ソースをつくり始めて以降、こんな苦情が出たことは一度もなかった。しかし、実際にソースを確かめてみると、匂いからしてヘンだった。鼻につく、何か化学反応でも起きたような匂いがする。日付を確認したが、別に賞味期限切れというわけではない。とはいえ、このまま商品を放置するわけにはいかない。私は急いで会社に原因究明を命じる一方、その時点で出荷していた全商品のリコールを決めた。
問題の原因はその日のうちに見つかった。原料の納入業者が誤って持ってきていたフレーバー(香料)を、そのままハワイアンソースに使っていたのである。それが通常のものよりも濃いフレーバーだったことで、ソースに入っている酢と混じった結果、変な匂いを発したのだった。
納入業者に連絡すると、あっさり間違いを認めた。そして、担当者は、
「申し訳ないことをしました。誠意をもって対応したい」 と頭も下げた。しかしその後、事態は思わぬ方向にこじれていく。この納入業者が契約している保険会社の弁護士が登場してきたからだ。
リコールには六十五万ドルの費用を要した。その費用を請求された納入業者は、保険から払おうとしたのだが、保険会社の弁護士が待ったをかけた。弁護士のいい分は、「納入業者に責任はない。ヨシダフーズ側が、納入されたフレーバーのアイテム番号が違っているのを確認しなかったのが悪い」というものだった。しかし、我々は業者から三年にもわたって同じ商品を買い続けている。しかも、フレーバーの見た目はどれも同じなのだ。小さく印刷されたアイテム番号を確認しなかったからといって、我々だけが非難されるのは納得できなかった。しかし、弁護士は「あなたが悪い。だから保険は払う必要はない」の一点張りだった。
保険会社を告訴した私は、裁判に二年半を費やすことになった。結果、勝訴の判決が下った。形の上では勝訴だが、ほとんど喧嘩両成敗のような「完全」勝訴とはならなかった。ただし、すぐにリコールという行動に出て、わずか三日間のうちに全米の商品を回収したことは、むしろ我が社の信頼を高める結果になった。小さな規模の会社が懸命に対処したということが、評価されたのである。

吉田潤喜
1949年京都市生まれ。69年渡米、ワシントン州とオレゴン州における空手を使った警察逮捕術主席師範を経てヨシダフードを設立。醤油ベースのソース「ヨシダソース」が爆発的ヒットに。現在グループ会社の会長兼CEO。2003年、インテルやAOLなどと並び、米国の優秀中小企業家賞を受賞し殿堂入りを果たすとともに、2005年のニューズウィーク日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。

このコラムは『人生も商売も、出る杭うたれてなんぼやで』(幻冬舎アウトロー文庫)から抜粋・編集しています

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