野村 祐人 × 鈴木 一真 「新たに湧き立つ役者魂」

Weekly LALALA 対談シリーズ
Eugene’s LIVE TALK

野村 祐人 × 鈴木 一真
「新たに湧き立つ役者魂」

 

 

野村祐人:一真くんと出会ったのは1994年だから、もう25年前? 時が経つのは本当に早い!

 

鈴木一真:その頃、僕はモデルの仕事をしていて、俳優に転向しようと思い立ち、この先生から演技を学べば個性を伸ばせると評判を聞いて入門したのが奈良橋陽子さん主宰のUPS(アップス)アカデミーでした。それが祐人との出会いでした。

 

野村:僕が二十歳の時に主演した映画『800(はっぴゃく)』(94年)の廣木隆一監督の次の作品が、一真くんのデビュー映画作品『ゲレンデがとけるほど恋したい』でした。僕は廣木監督と仲が良かったというのもあってその作品には出演してないけど、打ち上げに呼ばれて一緒に飲んだのを覚えています。そこから一真くんは、日本で役者の道を歩んできたわけだけど、4年前には文化庁新進芸術家海外留学制度で渡米して、ロサンゼルスを拠点に活動をスタートしました。LAではどのような活動をしていたんですか?

 

鈴木:本格的に英語での演技の勉強をしたいと思って1年間文化庁のプログラムでLAに来ました。その1年はアクティングスクールで学んだり、劇団に所属してプロモーションや照明など舞台の手伝いや、真田広之さんやマシ・オカさんなどハリウッドで活躍する方々からお話を伺ったりもしました。また、ご縁があってファッションショーの演出も経験しました。

 

野村:LAをはじめハリウッドでの経験を日本のエンターテイメントに役立てようということですね。

 

鈴木:そうなんですけど、1年間の研修期間を終えてみて、まだまだ勉強が足りないなと感じました。役者としてはもちろんですが、この機会に徹底的に英語を学びたいと思いました。僕は高校を中退してこの世界に入ったので、これまでの自分の実績を論文にして高卒の資格を取得できる制度を利用し、サンタモニカカレッジに入学して勉強していたのですが、それでも足りなくて他のカレッジにトランスファーして卒業しました。

 

野村:その行動力はすごい! 年齢を重ねて、仕事やプライベートで忙しくしていたら、なかなか大学で学ぼうなんて本当に難しいと思う。

 

鈴木:アメリカの大学は若者だけじゃなくて、幅広い年齢の学生やいろんな国の学生がいるからすごく刺激をもらいましたね。それでもまだまだ英語力が伸びないから、卒業後は週に1、2本は様々なオーディションを受けたり、インディーズ映画やショートフィルムに出演して鍛えています。

 

野村:いやぁ、自分では気づいていないだけで、絶対に英語力は上がっているはず。英語で台本を読んだり、セリフを覚えたりするのは大変ですから。

 

鈴木:先日の撮影現場では、もちろん英語のセリフだったんですけど監督が日本語を混ぜた芝居を見てみたいと言ったんです。それを監督が気に入って、言葉は通じなくてもけっこう伝わってくるよって言ってました。僕も久々に日本語で芝居をして、新鮮で楽しかったな。

 

野村:いいね、なんか楽しんでる。

 

鈴木:いや、もがき苦しんでるかも(笑)。

 

野村:僕も今その苦しみをオーディションを受けたりして、感じてるところなんです。先日は映画のオーディションで統合失調症の人を演じた。すごく惜しいところまで行ったんですけど、受からなかった。でも今また自分の中でふつふつと役者魂が復活してきた感じなんです。ところで、一真くんはアメリカでオーディションを受けていますが、情報はどこから得ているんですか?

 

鈴木:大作はマネージャーから連絡が来ます。インディーズ作品はアクターズアクセスというウェブサイトがあるので毎日チェックしています。コマーシャルやモデルのオーディションは専門のエージェントからですね。

 

野村:アメリカでの仕事をしながら、日本の仕事はどのように? 僕もそうだけど、海外に住んでいると日本とのスケジューリングって難しいですよね。

 

鈴木:この1年ほどはこちらでオーディションをたくさん受けているので、日本からのオファーはほとんど受けられていないのが正直なところ。日本の所属事務所が理解してくれているのはとても感謝しています。

 

野村:今、ハリウッドではアジア系の役者の需要が上がっていて、アジア人の役が増えてきているんですよ。『Crazy RichAsians(邦題:クレイジー・リッチ!)』といったアジア人だけが出てくる作品がヒットしたり、日本人役も『ラストサムライ』から少しずつ注目されるようになった。以前は、日本人役を中国人の俳優が演じていたりしていたけど、だんだんモラル的、文化的にも見直されて、本物の作品を作るにはやはり日本人は日本人が演じた方がいいという傾向になっています。本当にグローバルになってきてちょうど変換の時だと思うけど、これから挑戦してみたい役柄とか作品とかありますか?

 

鈴木:最近アクロバットを習っていて、もっとバク転、バク中、トルネードなどを極めて、アクション映画にも挑戦してみたいですね。それともう一つは、僕には日系三世のはとこがLAにいるんです。彼らは70代で、僕が子供の頃から憧れていたファミリーなんですが、第二次大戦中の辛い経験を僕に話してくれました。彼らのような日本人の血が流れていながらアメリカで生まれ育ち、辛くも逞しく生き抜いた方々を広く伝えていきたいという思いがあります。

 

野村:僕は、自分がプロデュースを手掛けた映画『終戦のエンペラー』のプレミア試写会をLAで行った際に、日系アメリカ人の方もいらっしゃって、様々な厳しい意見をいただきました。日本人としてのアイデンティティ、そしてアメリカ人としてのアイデンティティの狭間ですごくジレンマのある方もたくさんいると思う。「戦争」というテーマ一つ取っても様々な見方がある。そこには葛藤や憎しみ、悲しみがあったり、だけど友情や人情みたいな温かいものも生まれていたかもしれない。物作りをする僕たちが、映画というフィルターを通して人々の人生や歴史を伝える代弁者になれればなとは思います。

 


■野村祐人 (写真左) 1972年生まれ 87年俳優デビュー。映画「800 Two Lap Runners」(94)でキネマ旬報,スポニチグランプリ新人男優賞などを受賞し、以降は映画やテレビドラマなどで活躍。映画「壬生義士伝」(03)、「蒼き狼」(07)  、テレビドラマ「きらきらひかる」「鉄道捜査官シリーズ」など。また製作の分野にも進出し、日本映画「TAJOMARU」(09)、「笑う警官」(09)、「SURELY SOMEDAY」(10)、「手をつないでかえろうよ」(17)、ハリウッド映画「Emperor」(13)のプロデュースを手掛けている。

■鈴木一真(写真右) 静岡県出身。1987年モデルデビュー。パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨーク等でも活躍。95年俳優デビュー以降数々の作品に出演。2015年に文化庁新進芸術家海外留学制度および日米芸術家交換プログラムの任命を受けロサンゼルスに拠点を移し、映画監督兼プロデューサーで舞台演出家のRobert Allan Ackerman等に演技を学んだ。現在も映画、ドラマなど日米で活躍している。 インスタグラム @_kazumasuzuki_


 

鈴木一真さんが矢沢永吉さんのドキュメンタリーに出演
NHK総合テレビ
『ドキュメント矢沢永吉~70 歳 最後のレコーディング~』
放送:日本時間8月24日(土)22:10~23:10

 

番組では、矢沢永吉さんの新作のレコーディングにロサンゼルスで密着。レコーディングの合間に、プライベートの仲間と出かけた「ハーレーツーリング」にもカメラは同行。仲間とバイクで走り、さまざまな思い出があふれ出し、人生を総括するような「矢沢語録」が次々とこぼれ出る。

 

鈴木一真さんのコメント:「自分の渡米に関して、真っ先に相談したのがボス(矢沢さん)でした。ボスとの出会いは滝田洋二郎監督作品、映画『お受験』。ライバルのマラソンランナーという役柄のため、撮影は過酷を極めました。そのお陰か絆が生まれ、参加したヨーロッパ大陸横断ツーリングでは、初日から大事故に見舞われ、骨折しながらもゴール!また、ボスが所有する船の乗組員として天地がわからなくなるほどの嵐に遭遇し、死をも覚悟したクルージングなど、ボスとは公私共にドラマティックな時間を過ごさせていただきました。そんなボスが自ら最後と謳うレコーディングはここLA。ツーリングしない理由がありません!さて今回は無事にゴールできるのか!? ぜひご覧ください」

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