Eugene’s LIVE TALK 野村祐人 X starRo『 LAから世界に広がる starRoの音楽性 』(Weekly LALALA 734号掲載)

Eugene’s LIVE TALK

『 LAから世界に広がる starRoの音楽性 』

野村 starRoさんは、ロサンゼルスに拠点を置いて、日本人でありながらLAから自身の音楽を全米、日本、ヨーロッパ、アジアにまで発信しています。2016年にリリースした「Heavy Star Movin’ (starRo Remix)」が第59回グラミー賞の最優秀リミックス・レコーディングにノミネートされ、さらに注目を集めています。アメリカで生まれたわけでもない、日本からここに移り住んだ一人の日本人が、アメリカで音楽のメインストリームに食い込んで、アメリカ的感覚で世界に展開していける要因は何だと思いますか?
starRo 僕は、日本では高校の頃からDJや音楽活動をやっていましたが、2007年にアメリカに来て最初の5年ほどは音楽から離れていました。まずは生活基盤を作ることが先決だと思っていたので、LAで会社勤めをしながら、その合間で音楽制作をしていたんです。LAでアメリカ人の感覚で普通に生活をして、この国に根付くことを目標にしていました。それが大きいですね。
野村 そこから一転して、今や音楽プロデューサー、マルチ・インストゥルメンタリスト、DJとしてグローバルに飛び回る生活。LAにいながら「starRoミュージック」が世界を席巻といっても過言ではない状態になっていますが、そこまで広がったのはどうしてですか?
starRo それは、やっぱりインターネットの力が大きいですよね。ここ5年ほど世界的に広く活用されているのが音楽専用のクラウドサービスSoundCloud。僕はそこに自分が作った音楽を投稿するようになって、世界中の人に聴いてもらえるようになりました。
野村 世界的に影響力のあるアメリカを拠点にした音楽制作と、グローバルな力を持つSoundCloudというプラットフォームを活用したことで、自然に世界中にネットワークが広がっていったということですね。音楽制作ともう一つの大きな軸である「DJ starRo」としても、ツアーで国外を回ったりと精力的に活動していらっしゃいます。
starRo 昨年暮れにもヨーロッパ、アジアと回ってきましたが、特にアジアは行くたびに新しいクラブがどんどん増えて、音楽シーンがすごく盛り上がっているのを感じます。
野村 確かに、日本の飲食チェーンなども増えているし、アジアに価値を見出しているいろんな業界が進出のタイミングを狙っていますからね。日本もアジアの一員ですが、日本のクラブシーンや音楽シーンについてはどう感じていますか?
starRo 日本は日本で以前からクラブカルチャーや音楽カルチャーが確立されているから、余裕がある状況だと思います。だけど、インターネットで音楽がダウンロードし放題で、CDをみんなが買わなくなって音楽が売れなくなっている今の時代、世界の音楽業界が陥っている状況にもっと敏感になるべきだと思う。日本がこれから先の音楽業界の変化に付いていけるかどうかの危惧はありますね。
野村 starRoさんの音楽ルーツってどんなところにあるんでしょうか? やっぱり日本に住んでいた子どもの頃にさかのぼるのかな?
starRo そうですね、うちの親父がジャズピアニストで、僕が子どもの頃も週末にはジャズクラブで弾いていました。でも僕はずっとジャズが嫌いだったんです。
野村 僕もそうでした。僕の親父も音楽が大好きで、興味ないのにジャズ喫茶に無理やり連れて行かれていました。小学生だった自分にはジャズの良さなんてわかるわけもない。妹と一緒に「早く家に帰りたいなあ」なんてぼやいていましたね。
starRo それでも家の中ではずっと親父がピアノを弾いてたり、レコードをかけたりしてたので、ジャズは僕にとって自然と生活音化していたんです。高校の頃になるとあれだけ嫌だったのに好きになっていました。何が好きかというと他の音楽には無いジャズ特有のコード進行。そのサウンドにどんどん惹かれていきました。
野村 ジャズやブルースがstarRoさんの根底にあると同時に、90年代のR&Bやヒップホップ、ハウスミュージックなどがstarRoミュージックを築きあげてきたんですね。そんな音楽プロデューサーとしてのstarRoさんの活動の幅をさらに広げているのが、2013年にアーティストの一人として加入したレーベル「Soulection」での活動だと思いますが。
starRo Soulectionは、LAを拠点に、クラブミュージックやヒップホップをベースにしてトレンドを意識した様々なサウンドをクリエイトする20名ほどのミュージシャンが集まって活動しています。もともとは6年ほど前にメンバーの一人がアンダーグランドミュージックを紹介するラジオステーションから始まったんです。それがだんだん人気が出てきて、レーベルにまで成長していきました。
野村 Soulectionといえば、音楽制作だけでなくメディアやエンターテイメントなど多方面で活動を展開しているし、クルーの一人ひとりがクリエイターとしての実力を確立して音楽シーンをリードしているすごい集団。音楽的にいろんな影響を受けますか?
starRo 彼らとは、例えば「今回自分が作った曲はSoulectionレーベルから出したいから手伝ってくれ」と共同で制作したり、でもそうでない時は手伝わない時もある、というユルい関係です。お互いインスパイアし合う仲間みたいな位置づけ。みんな音楽性が似ているので、いい意味で影響を与え合っていますね。
野村 加えて、starRoさんのこれまでの音楽人生の中でも、大きいのが第59回グラミー賞でのノミネートだと思いますが、ここからご自身の中で何か変化したことはありますか?
starRo 音楽制作では、サウンドクラウドで現在フォロワーが6万人ほどになりましたが、そんなプロデューサーなんてたくさんいます。しかもこの音楽業界のメッカであり音楽レーベルが集中するLAでそんな自分が「starRoです」と自己紹介したところでなかなか話を聞いてくれるわけでもない。しかし、グラミー賞にノミネートされたことでそれが名刺代わりにもなり、僕の話に耳を傾けてくれやすくなった、それは大きいです。
野村 今のアメリカの音楽シーンで展開していく中で、今後starRoミュージックが大切にするべきことってどんなことだと思いますか?
starRo 今アメリカはアンダーグランド的にシンプルに作られた音楽がトップチャートに上ったり、流行りに縛られたメジャーな音楽作りをしなくてもチャートに食い込めるようになった。これは、昔みたいに音楽性自体がまた重視されるようになった証だと思います。僕は、音楽を発表するからには、できるだけ多くの人に聴いてもらいたいと思いながら音楽を作ってきました。これからも音楽の本質や自分の音楽性を大切にしながら、たくさんの人が楽しめるようにシンプルな作品作りをしていきたいと思っています。

■野村祐人
東京都出身、ロサンゼルス在住。俳優、映画プロデューサー。父は、バンド「ゴダイゴ」をプロデュースしたジョニー野村氏、母はキャスティングディレクター・演出家・作詞家の奈良橋陽子氏。日米で俳優、映画プロデューサーとして活躍。
■starRo
神奈川県出身、ロサンゼルス在住。音楽プロデューサー、マルチ・インストゥルメンタリスト、DJ。2007年渡米、2013年にSoulectionに加入。2016年にアルバム『Monday』リリース。同年、The Silver Lake Chorusの「Heavy Star Movin’ (starRo Remix)」が第59回グラミー賞の最優秀リミックス・レコーディングにノミネートされた。

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