Eugene’s LIVE TALK 野村祐人 X コウ・モリVol.2『 ハイブリッドな映画作品 』(Weekly LALALA 728号掲載)

Eugene’s LIVE TALK

Vol.2 『 ハイブリッドな映画作品 』
Vol.1「映画製作と配給」は、LALALA バックナンバーVol.727号からご覧ください。

モリ 物事って結果が出るとすごく嬉しいものですが、映画の配給もその作品を一生懸命に宣伝して、数字が出ると「やった!」ってなりますね。
野村 それは、映画の作り手としてもそうだし、配給する人たちにとっても、広く世に出ていない作品に光が当てられて、たくさんの人に知られるようになる。そこには、たくさんの人たちの思いや夢が詰まっているんだと思います。
モリ そこで、先にも話した僕にとっての理想の形である「自分たちで映画を作って、自分たちで配給して売っていく」という完結型の映画製作をすること。これができれば最高だと思っているし、夢でもあります。そこをゴールにしながら、配給ビジネスをさらに次のレベルに持っていきたいとも思っています。
野村 配給ビジネスでは、特にここ最近では、日本製アニメ作品の北米配給では好成果を上げていらっしゃいます。アニメは、その業界自体のマーケットの拡張も飛ぶ鳥を落とす勢いですし、アニメにまつわる映画ビジネスも上がっていくと期待されていますか?
モリ そうですね。これまで、アニメはアニメ文化としてアメリカに広まり、映画とは別の分野でした。しかし、最近ではアニメと映画が完全にクロスオーバーしてきていますし、今がチャンスだと思っています。その一つの例として、昨年大きなニュースになったのが、新海誠監督の長編アニメ『君の名は。』がハリウッドで実写映画化されることになり、映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)などを手がけたJ・J・エイブラムス氏がプロデュースを行うというものでした。
野村 『ONEPIECE』や『NARUTO』などは海外で大ヒットしていますし、これからアニメは映画業界の中でもメインストリームに図らずともなっていくということでしょうね。
モリ さらに昨年夏には、ソニーの映画子会社であるソニー・ピクチャーズエンタテインメントが日本のアニメ作品を米国で配給するファニメーション・プロダクションズを1億4300万ドルで買収したというニュースもありました。これは、完全に映画スタジオがアニメビジネスに注目しているということです。アニメを通して、配給は配給でもっと成長してほしいという願いがあります。
野村 アニメ映画市場はまだまだこれから開拓しがいのある〝ワイルドウエスト〟。ワクワクしますね。
モリ その映画配給が成長して独り立ちする傍らで、作りたい映画作品もたくさんあります。作品作りでいえば、野村さんが言ったように「表現」の部分でどう自分のオリジナリティを出すか。
野村 アメリカ人がアメリカで育ってアメリカ人として映画をクリエイトするのと、僕ら日本人が日本で育ってアメリカに来て作る映画作品には、まったく違うエッセンスが含まれるもの。グローバルなエッセンスが絶妙にミックスされたクリエイティビティを発揮して作られた作品こそが「ハイブリッド」になる。

■コウ・モリ
ロサンゼルス在住。映画プロデューサー、映画配給者。映画製作配給を行うELEVEN ARTS, Inc. President & CEO。Downrange (トロント映画祭、釜山映画祭など映画祭多数、2018年全米公開)、Lords of Chaos (最新作、2018年サンダンス映画祭公式招待/ワールドプレミア)ほか多数製作。プロデューサーとして日本人唯一PGAメンバー(Producers Guild of America)
■野村祐人
東京都出身、ロサンゼルス在住。俳優、映画プロデューサー。父は、バンド「ゴダイゴ」をプロデュースしたジョニー野村氏、母はキャスティングディレクター・演出家・作詞家の奈良橋陽子氏。日米で俳優、映画プロデューサーとして活躍

 

モリ そうですね、そのハイブリッド感は、持てる者にしか持てないし、それが自分の表現したい軸となっているんだと思います。僕の尊敬する映画人にリュック・ベッソン監督がいます。彼の作風は斬新ですが、それを作り出している一番の要因は、彼がピュアなフランス人であること。作品『レオン』や『トランスポーター』などはそれまでにはない新しいものであり、ヨーロッパとアメリカのハイブリッドといえる作品。それをみんなが斬新だと感じたんです。そんなハイブリッド感を自分も打ち出すことができたらと思います。
野村 昨年は、御社ELEVEN ARTSによって日本の長編アニメ作品『サイレントヴォイス』(邦題:映画 聲の形)(山田尚子監督)と『A Bride for Rip Van Winkle』(邦題:リップヴァンウィンクルの花嫁)と注目の2作品がアメリカで公開されました。同2作品のアメリカでの評価はいかがでしたか?
モリ 『サイレントヴォイス』は、全米226スクリーンで公開されました。耳が聞こえない女の子とその子をいじめてしまう男の子を中心にストーリーが展開していく作品。京アニとも呼ばれ劇場版アニメーションを主力事業とする京都アニメーションだけに絵の美しさも含めリアルな心理描写が、アメリカで文化的に高い評価を受けています。
野村 『A Bride for Rip Van Winkle』(岩井俊二監督・脚本)を観ました。いい意味で掴みどころのない作品。3時間の作品ですが、最後まで飽きない、面白い作品でした。描写も今の日本ぽくて、今の東京ぽい。外国人から見てもヒップな香りのする東京が感じられるだろうし、作品から醸し出される影のような暗さやあたたかさも感じられます。
モリ この作品のストーリーは、一人の女の子がSNSで出会った男性と結婚することになり、その二人の結婚式をめぐって破天荒な出会いや出来事が起こるというもの。一人の女の子のジャーニーを通して、作品を観ている一人ひとりの人が色々なメッセージを受け取られるんじゃないかと思います。岩井俊二監督は言わずと知れた巨匠です。だから我々配給者も岩井監督の作品をもっとこのアメリカでディストリビュートしていきたいし、監督の多くの素晴らしい作品を浸透させていきたいと思っています。今の日本の映画を文化も言葉も違うアメリカの人々が観た時に、どのように感じるのかは興味深いですよね。
野村 日本映画ならではの独特な間や、時折感じられる驚きみたいな絶妙な表現とかって、海外には無いものですからね。日本の巨匠といえば、十年以上前に三池崇史監督の舞台作品に出演させていただいたことがあるんです。三池監督は、無名の役者をオーディションして積極的に起用するし、台本に書かれてないこともどんどん現場に持ち込むんです。予測できないことをすることにより、現場の活気がぐんと上がる。そんな斬新なことをする日本の監督がアメリカ映画を撮ったら、どんな作品ができるんだろうって考えるだけで楽しみになってきます。
モリ それは間違いなく、アメリカでは生まれないだろう「ハイブリッド」な作品になるでしょうね。