100%の情熱注ぎ込む  最前線から母国へ恩返し(Weekly LALALA 749号掲載)

ロサンゼルスで暮らす人々-vol.749

100%の情熱注ぎ込む 最前線から母国へ恩返し
清水 藤太|Tota Shimizu, DDS

ロサンゼルスで暮らす人々   歯科医

100%の情熱注ぎ込む-最前線から母国へ恩返し
歯科衛生士学校にてマイクロスコープの使用法をレクチャーする。「学生たちの教育は未来の歯科医を育てているという充実感がある」という。

 祖母と父親が歯科医だったため、自然と「家業を継ぐ」という形で歯科医になった清水藤太さん。その専門は「エンドドンティクス」と、一般的には聞き慣れない分野だ。これは歯内の根管治療、つまり歯の神経治療を専門としており、日本はこの分野では韓国や台湾などの近隣諸国と比べても遅れているという。「日本の歯科はある分野では非常に進んでいるところがある一方、ある分野ではびっくりするほど遅れているところがある。他の産業分野でもそうかもしれないけれど、非常に進歩的なところと旧態依然としたところが混在しているところがあります。そのため、エンドドンティクスの分野で進んでいるアメリカで勉強し、それを日本に還元したいと思いました」。
 1998年、留学先に選んだのは南カリフォルニア大学(USC)。米国で有数の大学院のなかでも、東海岸のペンシルベニア大学と並んでこの分野ではトップであるという理由からだった。2年後に米国歯科国家試験に合格し、同年、USC臨床准教授に就任すると大学院生の臨床指導を開始。翌2001年、ロサンゼルスにてエンド専門医として開業した。2011年にはUSC歯学部『2011年度最優秀臨床准教授賞』を受賞。10年間の功績が認められた瞬間だった。2013年からはUCLA歯学部に移り、現在もクリニカルインストラクターとして若き医師の卵たちの指導にあたっている。
 歯科医としての仕事は、実際の診療を通じて「この歯を助けることによってこの患者さんの人生のクオリティーを高めることに貢献している」という実感を得られ、同時に学生たちの教育を通じて未来の歯科医を育てているという充実感があるという。「ラッキーなことに、この仕事には自分は100%の情熱を注ぎ込めています。それだけの情熱があれば、逆境や失敗があってもそれを逆境とも失敗とも思わない(笑)。 だから困難なことというのは一切ないです。ゼロ」と言い切る。
 留学生時代、英語も得意ではなく、ほかの学生たちになじめない自分がいた。しかしある日、勇気を出して放課後の飲み会に参加してみた。思い切って輪の中に飛び込んでみると、場を楽しみ周囲と打ち解けることができ、米国では日本人の美徳とされる遠慮や引っ込み思案は通用せず、「図々しいくらいがちょうどいいと悟りました」。そんな経験をしたロサンゼルス在住歴はすでに20年。すべてが自己責任であるところが気に入っている。「だれも他人のことを気にしないし、自分も他人のやる事に何の責任も負わない。各人が自分のやるべきことを自分で決めて自分のペースで進んでいける。すべての人にとって無限の可能性が広がっている場所」。開業した土地への愛着は強いが、母国への感謝も忘れてはいない。「ロサンゼルスという歯科の最前線で日々診療している立場から日本の先生方に還元できるものは多くあると思う」と、遠く離れた場所からの恩返しを誓う日々だ。

サウジアラビア歯科医師会総会で講演。「日本の歯科はある分野では非常に進んでいるところがある一方、ある分野ではびっくりするほど遅れているところがある」と、海外から日本へ還元することで母国への恩返しを目指す。
マイクロスコープを用い、外科処置を行う。「この仕事に100%の情熱を注ぎ込めているので、逆境や失敗があってもそれを逆境とも失敗とも思わない。困難なことはゼロ」と話す。


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