「ブラインドセーラー、太平洋への再挑戦」(5/24/2018)

セーラー

岩本 光弘|Mitsuhiro Iwamoto

 2013年にヨットでノンストップの太平洋横断に挑戦したが、達成ならなかったサンディエゴ在住の盲目のセイラー、岩本光弘さん。しかし先日、来年春に再び太平洋に挑むことを発表。現在パートナーとトレーニングをしている岩本さんに再挑戦にかける意気込みを聞いた。


 そもそも日本にいた時に出会った奥様の影響でセーリングを始めた岩本さん。
 「最初は小さな船に乗って怖かったのですが、乗っているうちに、風に乗ってすっと走る爽快感と、風さえあればどこへでもいけることにロマンを感じました」。それからセーリングのメッカとして知られるサンディエゴに定住、多くのレースに参加してきた。2013年6月には、ニュースキャスターの辛坊治郎さんと福島からサンディエゴまでの太平洋横断に挑戦し、話題に。しかし、6日目に鯨とぶつかり遭難。海上を漂流しているところを海上自衛隊に救助された。当時は「無謀な試み、税金の無駄使い」とバッシングを受けた。また岩本さん自身も海に恐怖を感じるように。けれども海のトラウマを払拭するためトライアスロンを始めて、昨年は有名なトライアスロン大会「IRONMAN Arizona」にパートナーと参加し、完走。絶対に挑戦を諦めないという信念を再び持つことができた岩本さんは、セーリングのパートナーを探していたところ、友人の紹介でダグラス・スミスさんと出会った。


 「パートナーにはあえてセーリングの初心者を選んで、私が指導し、お互いの欠点を補うようにしています。それは私が何もしないで連れて行ってもらうのでは、自分の挑戦にならないからです。この挑戦は自分の夢に協力してくれるドリームサポーターが必要ですが、ダグをはじめ、様々な方からの援助があって成り立っているのだと感謝しています」


 今回の航海は安全面を第一に考え、前回の28フィートの比較的小さなヨットから40フィートの安心して外洋航海できる船体にした。また想定できる限りの非常事態を考えて、パートナーとの役割分担を細かく決め、シミュレーションを繰り返している。そこまでしてこの挑戦にこだわるのはなぜなのか。


 「世界中の人、特に若い人たちへ、人が持つ潜在能力は計り知れない、自分でリミットをかけてはいけない、どんなことでも思ったことは実現できるのだと身を持って証明したい。成功するまでやり続けるのが大切だとメッセージを送り続けたいのです。また、私たちの行動が社会に貢献できることを目指して、視覚障害の支援団体や障がい者のスポーツ団体、福島の放射線濃度を測る団体へ皆さんの寄付金を寄付します。私たちの活動に共感する方はご協力ください。私たちと一緒にあなたの気持ちを乗せて太平洋を渡りましょう」。

16歳で全盲となった岩本光弘さん。現在はサンディエゴで鍼を使用する代わりにツボを指で押して気を送る「指鍼術療法」を行うかたわら、太平洋横断の準備を進めている。詳細や支援はこのプロジェクトのウェブサイトへ。 www.team-dw.com

今回のセーリングに使用するDream Weaver号。自分たちの「夢を紡ぐ」願いを込めて命名した。来年2月中旬、サンディエゴから出航し、60日間かけて福島県小名浜を目指す予定。

今回のセーリングのパートナー、ダグラス・スミスさん(写真右)。日本で岩本さんの挑戦を聞き、パートナーとして立候補した。

 

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