<連載コラム>人種や文化超えた挑戦(2)(Weekly LALALA 758号掲載)


サンディエゴ・パドレス 応用スポーツ科学ディレクター
中垣 征一郎 さん


人種や文化超えた挑戦(2)


<連載コラム>人種や文化超えた挑戦(2)
中垣さん(左)は応用運動科学ディレクターとして、1年間を通してマイナーリーグを巡回し、選手の体の使い方や動きの特徴を見極めながらトレーニング指導を行っている

 サンディエゴ・パドレス応用スポーツ科学ディレクターの中垣征一郎さんがトレーニング理論に“ハマった”のは、日本の学生時代に出会った恩師の基礎や原理原則を重んじた教えだった。
また、米国留学の前に2年間働いていた社会人ラグビーのチームでは「科学知と実践知の面白さや難しさ」を感じることができ、この2年間でスポーツトレーニング指導を生業にする覚悟ができたという。これらが転機となって、現在の仕事につながっている。野球との出会いは、スポーツ好きの父にキャッチボールを仕込まれたことが始まりだった。父は会社の野球チームで70歳までプレーし続けていたほどの野球好き。中垣さんの進路にも大きな影響を与えた。「少し器用で活発」だった少年時代、スポーツはさほど得意ではなかったが、とにかく好きでうまくなりたいと思っていたという。小学校5年生の時に少年野球チームに入り中学までプレーした。高校、大学では陸上競技を行った。
 スポーツ好きという基盤はすでに子どものころから固められており、「自分のスペシャリティを確立するため」に行った米国留学ではスポーツパフォーマンスにおける爆発的な力発揮について研究。マイナーリーグでの実習で久しぶりに野球に携わったことがきっかけとなって、野球の世界に足を踏み入れた。日本の大学でも関連の専攻だったとはいえ、母国語とは別の言語で仕事をするとなると苦労はつきものだ。「いつでもそうですが、困難なことの方が多いです。日本でもアメリカでも変わりません。それが普通だと思います。中でもアメリカでは、言葉の壁は様々な場面で今なおとても大きいです」という中垣さんの言葉からはその厳しさが感じられる。
 異国の地で奮闘しながら、今後は、「スポーツパフォーマンス向上のための体系的な取り組みとについて学び続け、その知見をできるだけ多くの人とシェアしていくこと」が目標だ。人間の日常生活においても、スポーツは健康のためのさまざまな役割を果たす。中垣さんは「子どもの体力低下や高齢化が問題視される日本でもますます大きな役割を果たしていくと思う」と予見する。
また、多くの若きアスリートが日々厳しいトレーニングに励んでいるが、その全員が成功できるわけではない。一流となれるのは、むしろほんの一握りにすぎない。「スポーツを通した活動が勝負やアスリートとしての成功を超えて意味のあるものとなるよう、多くの方々の英知を結集し、その取り組みに道筋を立ててスポーツに取り組んでいける環境を作っていくことができたら」と、中垣さんの描くビジョンは大きい。

■Seiichiro Nakagaki
東京生まれ東京育ち。70歳まで会社のチームで野球をプレーしたという父の影響を受け、子どものころからとにかくスポーツが好きだった。筑波大学体育専門学群で体力トレーニング論を専攻し、卒業後は社会人ラグビーチームで2年間働いた。27歳で米国留学し大学院で運動学・運動生理学を専攻、スポーツパフォーマンスにおける爆発的な力発揮について研究。知人の紹介でマイナーリーグで実習を行ったことがきっかけで野球界へ。現在はサンディエゴ・パドレスの3A(2軍)からルーキー(7軍)までおよびメジャーリーグを巡回しながらスポーツ指導を行っている。

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