<連載コラム>人種や文化超えた挑戦(1)(Weekly LALALA 757号掲載)


サンディエゴ・パドレス 応用スポーツ科学ディレクター
中垣 征一郎 さん


人種や文化超えた挑戦(1)


人種や文化超えた挑戦(1)
応用運動科学ディレクターの中垣さん(右)。1年間を通してマイナーリーグを巡回し、選手の体の使い方や動きの特徴を見極めながらトレーニング指導を行っている

 「人間の体がトレーニングによって目的によってどのように適応を起こすか、また、それらを実際のスポーツパフォーマンスにどのように反映させるか。これらに整合性をもたせながら進めていくスポーツトレーニングに難しさと面白さを感じる」という中垣征一郎さんは、サンディエゴ・パドレスの応用スポーツ科学部長を務める。スポーツの道に進んだことは、70歳まで野球をプレーしていたという父の影響が大きい。日本の大学では体力トレーニング論を専攻し、卒業後はトレーニング指導の仕事に就いたが、「自分のスペシャリティを確立するために勉強が必要」だと感じ、27歳で留学を決意した。行き先は米国。「さまざまな意味で近代スポーツの発展にもっとも影響した国」だと考え、勉強と経験を積みたいと思った。専攻は運動学・運動生理学で、スポーツパフォーマンスにおける爆発的な力発揮について研究した。野球の道に進みたいという思いはなかったが、この留学でマイナーリーグでの実習の機会があったことが野球界へ入るきっかけとなった。「日本に帰って研究や教育など大学で仕事をすることを一番に考えていましたが、さまざまな縁に恵まれて今の状況につながっています」。
 現在は3A(2軍)からルーキー(7軍)までおよびメジャーリーグを巡回する中垣さんの仕事は、選手が持つ能力を最大限に発揮できるようサポート、つまりスポーツ指導することだ。若手が育てばMLBでの仕事が増えることになる。指導や人材育成には個性や一人ひとりの特徴を重んじることが大切であり、特に個性の大切さが強調されるようになった近年においても「基礎や原則を知らなければ個の特徴をより深く捉えることはできない」と、仕事を通してより感じているという。「これまでできるだけトレーニングや人が行なう運動構造の原理原則に従いつつ実践に落とし込んで行ってきたつもりです。そう思ってやってきたことが本当に原則的なことと言えるのか、人種や文化を超えて挑戦してみたいと考えました。もしも原理原則から大きく外れていなければ、人種や文化を超えられるはず。そこに挑戦してみたいと考えました」。人種や文化を超えて、自分が考えていることと選手がこうなりたいと思う気持ちが重なり合った時や、選手ができなかった運動技術ができるようになり新たな運動感覚を得る瞬間、またはそのきっかけをつかみ始めてなんとかしようと一生懸命に取り組んでいる時間にやりがいを感じるといい、「子どもが乗れなかった自転車に乗れるようになったり、逆上がりができるようになった瞬間の親の気持ちに似ているかもしれません」と話す。
(8月24日号へ続く)

■Seiichiro Nakagaki
東京生まれ東京育ち。70歳まで会社のチームで野球をプレーしたという父の影響を受け、子どものころからとにかくスポーツが好きだった。筑波大学体育専門学群で体力トレーニング論を専攻し、卒業後は社会人ラグビーチームで2年間働いた。27歳で米国留学し大学院で運動学・運動生理学を専攻、スポーツパフォーマンスにおける爆発的な力発揮について研究。知人の紹介でマイナーリーグで実習を行ったことがきっかけで野球界へ。現在はサンディエゴ・パドレスの3A(2軍)からルーキー(7軍)までおよびメジャーリーグを巡回しながらスポーツ指導を行っている。

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