直感で道切り拓く(Weekly LALALA 797号掲載)

ロサンゼルスで暮らす人々-vol.797

直感で道切り拓く
長 真由 / Mayu Cho

ロサンゼルスで暮らす人々 俳優

直感で道切り拓く
今年5月に『12人の怒れる女』で米国で舞台デビューした長真由さん。演じる陪審員11は通常、欧州出身のユダヤ系移民という設定だが、日本人女性が演じるというのは非常に稀なキャスティングだ。「言葉の壁もあってさんざんだった」というオーディションを見事にクリアし、役を勝ち取った。同作は5月10日にスタートし、同31日、6月1/7/8/14/15日にサンタモニカのPromenade Playhouse(www.promenadeplayhouse.com)で上演される

 自分の魂の声を聞き、それに従う。イギリス留学、離婚、そして渡米。長真由さんが人生のターニングポイントで決め手とするのは〝直感〟だ。「振り返ると常に自分の魂に素直に道を選択してきた。それが道を拓いた」。2017年にロサンゼルスへ移住し、今年5月、『12人の怒れる女』でプロの俳優としての米国初舞台を踏んだ。
 「演技の中でリアルに役の声を汲み取って、細部までリアリティを表現する」ことに興味を引かれた。演劇学校卒業後、マネジメント事務所に入り芸能活動を始めることになっていたが、シェイクスピアの作品を観劇して興味を持ったイギリスに留学。5年後に帰国すると、国際的な雰囲気でやりたい気持ちが芽生え、日本が窮屈に感じた。それでもアクティングは続けた。「芝居をやりたい気持ちはずっとあった。でも結婚していたし、日本で趣味程度に続けるのがいいのかなと思っていた」。
 もやもやとしながらも踏み出すきっかけが見つからずにいたある日、友人に誘われLAの日系米国人が主催するワークショップに参加。その一環のオーディションで1位になり、「求めていたことがひらけた気がした」。LAという選択肢が意識に飛び込んできて、悩む気持ちを振り切って離婚。そして渡米した。
 『12人の怒れる女』への出演は、厳しいオーディションをクリアし実力で勝ち取った。1954年に米国で放映されたテレビドラマ『12人の怒れる男』の女性版で、映画や舞台で何度もリメイクされている作品だ。父親殺しの容疑で裁判にかけられた少年の審議のため、12人の女性陪審員が集められ、だれもが有罪を確信する中で陪審員8だけが無罪に票を投じる。そこから白熱した論争が始まり、徐々に浮かび上がる疑問と対峙しつつ、一つの結論を全員で導き出していく。
 今回のプロダクションでは、登場人物が白人のみの原作とは異なり主役2人は南米出身で、黒人もアジア人も登場する。アメリカの縮図のようなキャストにおいて、長さんが演じるのは日本からの移民という設定の陪審員11。「言いたいこと、やりたいことがあったのにできなくて、米国に来たことで本当に望むことを表現できるようになった女性。そこが自分に重なった。今この役をやるのが運命かなと感じる」と、役への思い入れは深い。
 「脚本を読み込み、役柄を汲み取って自分と融合させ、オーディエンスの魂と共鳴すればケミストリーが生まれる。私にとってはそれ自体がアート」。キャラクターの核を見つけなければセリフにも魂がこもらないが、見つかったときの喜びは大きい。苦しみながら脚本と向き合う時間は楽しくもある。

「自分が選択したことであこがれのブロードウェイなどに近づくことができ、道がひらけてきた。突然そうなってびっくりしているけれど、最初の直感は正しかった」と語る
米国で初のプロフェッショナルな舞台に出演中。「どうやっていくかまったくわからなかった。役が決まってからイベントまで2週間しかなくて、リハも5回しかなかった。1回も通せずに迎えた本番だったけれど、みんなで助け合って作り上げていった」


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