想田和弘監督 観察映画第7弾 『港町 Inland Sea』 ロサンゼルスで上映(Weekly LALALA 779号掲載)

想田和弘監督 観察映画第7弾 『港町  Inland Sea』 ロサンゼルスで上映

想田和弘(そうだ・かずひろ)
栃木県足利市生まれ。東京大学文学部卒。スクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒。93年からニューヨーク在住。映画作家。台本やナレーション、BGM等を排した、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。監督作品に『選挙』(07)、『精神』(08)、『Peace』(10)、『演劇1』(12)、『演劇2』(12)、『選挙2』(13)、『牡蠣工場』(15)があり、国際映画祭などでの受賞多数。著書に「精神病とモザイク」(中央法規出版)、「なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか」(講談社現代新書)など多数。
想田和弘監督・製作、柏木規与子製作。
前作『牡蠣工場』の撮影で岡山県牛窓を訪れた想田監督は、撮影の合間に港を歩き回り、その最中に町の人々と出会う。失われつつある土地の文化や共同体のかたち、小さな海辺の町に暮らす人びとの姿と言葉が、モノクロームで映し出される。ナレーションやBGMなどを排した想田監督独自のドキュメンタリー手法「観察映画」の第7弾。

まだ夜明けには程遠い暗がりの中、釣り船に乗り込み海へ向かう一人の年老いた漁師。日の出とともに網からあげたばかりの新鮮な魚を漁師が箱に入れて持ち込んだ魚市場では競りが始まる。場所は、日本のエーゲ海ともいわれる岡山県の牛窓。漁師、近所に住む老婆や町の人たち、海辺に住みついた猫たち・・・『港町 Inland Sea』は、その穏やかな内海で暮らす人々の何気ない日常をカメラがじっくりと追う観察映画(=observational film)。
 監督はニューヨーク在住、ヨーロッパやイタリア、カナダ、中国などでレトロスペクティブが組まれるなど、国内外で高い評価を受ける映画作家・想田和弘さん。自身にとって観察映画第7弾である本作『港町』は、第68回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式招待作品で、日本をはじめ世界各地で上映。
1月11日・12日にはUCLA Film & Television Archive主催によりロサンゼルスで試写会と、想田監督を迎えてのQ&Aセッションが行われた。
 これまでの観察映画作品には『選挙』『精神』『牡蠣工場』などで知られている想田監督。「観察」をキーワードに長年ドキュメンタリーを撮り続ける自身にとって、作品作りに外せないのは「事前のリサーチやテーマ設定は持たない、台本作りをしない、目の前の現実をよく観てよく聴きながら行き当たりばったりで、必ず自身の手でカメラを回し続けること」だと話す。
 上映時間122分のこのドキュメンタリーには、映画とはいえバックグランドミュージックなどない。ちゃぷちゃぷと揺らぐ穏やかな波の音や漁船が走る音、人々の話し声、町中を走るケイトラックのエンジン音やみゃあみゃあと野良猫が泣く声といった、普段無意識に耳に流れる生活の音のみ。
 普段の生活だからこそ、町の人々のキャラクターや人生そのものを浮き彫りにしてしまう。年老いた漁師わいちゃんは、何十年もの間釣り船に乗ってきたベテラン漁師。80歳も過ぎて引退を考えているが、後継ぎはいないという。近所に住む老婆、くみさんは「あんたに町の人を紹介してあげよう、きれいな場所があるから連れて行ってあげよう」と何かとカメラに話しかけてくる。
 そんなカメラが映し出す一コマひとコマからオーディエンスは何を感じるのだろうか。瀬戸内のような内海で育った人は、はるか昔を思い出して郷愁にさそわれるかもしれないし、過疎と老いが忍び寄る町の姿を垣間見て孤独や寂しさに陥る人もいるかもしれないし、町の人たちの笑顔から生きる活力を受けとる人もいるかもしれない。
 何を感じるかは、オーディエンス一人ひとりにゆだねられている。


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