「東日本大震災から7年—。 LAで『息の跡』上映」(Weekly LALALA 734号掲載)

ロサンゼルスで暮らす人々-vol.734

「東日本大震災から7年—。 LAで『息の跡』上映」
小森 はるか|Haruka Komori

ロサンゼルスで暮らす人々   映像作家
日本を拠点に活動する映像作家、小森はるかさん。静岡県生まれ、映画美学校12期フィクション初等科修了。東京芸術大学美術学部先端芸術表現科卒業、同大学院修士課程修了。これまでの監督作品に、『oldmaid』(09/映画美学校修了制作)、『彼女と彼女たちの部屋』(09/イメージ・フォーラムフェスティバル2010にて上映)、『the place named』(12/『桃まつりpresents すき』の一篇)、『あいだのことば』(12/『星空と路』にて上映)など。

 東日本大震災から7年を迎えるロサンゼルス時間の3月10日。日本を拠点に映像作家として活動する小森はるかさんによるドキュメンタリー作品『息の跡(いきのあと)』がウエストLAで上映される。この作品が制作されたのは、震災により大きな被害を受けた岩手県陸前高田市。荒涼とした大地に、ぽつんとたたずむ一軒の種苗店「佐藤たね屋」を営む佐藤貞一さんの一日一日をカメラで追ったこの作品で、小森さんが伝えたかったこととは何だろうか。
 震災の後、陸前高田で3年間暮らした小森さんは、刻一刻とかわる町の風景と、そこで出会った人びとの営みを記録してきた。「津波で自宅兼店舗を流された佐藤さんは、その跡地に自力でプレハブを建て、手描きの看板を立てて、山の落ち葉や鶏糞を混ぜた苗床の土に、手掘りした井戸からポンプで水を汲みあげて、たね屋の営業を再開しました。その一方で彼は、自らの体験を独習した英語で自費出版し、中国語、スペイン語などの外国語で綴り続けています。地元の人から佐藤さんのことを聞き、彼がどんなことを綴っているのか、どんな一日を過ごしているのかを記録してのこしておきたいと思いました」
 佐藤さんの仕事の手伝いをしながら、カメラを回す小森さん。スクリーン上では、佐藤さんがその時その時のことを話し、小森さんが相槌を打つ。作業をしながら続く二人のやりとりからは、ほっこりと温かい空気が流れ、映像を観ている人もそこにいるような気持ちにさせられる。
 2011年に震災が起きた時は大学生だった小森さんは、当時から映像を撮って制作活動を行っていた。「一緒に制作活動をする画家で作家の瀬尾夏美さんと共に東京を離れ、最初は二人で被災地でボランティアをしようと東北に向かったんです。しかし、現地で暮らしている人たちとの出会いや、その土地で様々なことを目の当たりにし、そこに私たちがどうかかわっていくかを考えた時、それは映像や文章で伝えることでした」
 あれから7年。被災地では大規模な復興工事が進められている。「そこにかつてあった自分が住んでいた街が土の下に埋められ、その上に新しい街ができていく。震災によって失われたものもあるが、工事によって失われたものもある。複雑な思いに、前に進めない時期もありましたが、それでも皆の気持ちは少しずつ前に進んでいると信じています」
 「佐藤たね屋」には、佐藤さんが愛情を注いで毎日手をかけることで成長していく野菜の苗や花々があり、津波の跡を緑色に覆った植物たちがある。そこに力強く生きる人々や息づく植物たちの姿をとらえた作品『息の跡』は、たくさんの人々の心に生きる勇気や生きることの素晴らしさを教えてくれるに違いない。

取材協力:株式会社ENパシフィックサービス

↑映画『息の跡』の無料上映会がロサンゼルスで3/10(土)1pm~3pmに行われる。場所はTheTerasaki NibeiFoundation。申込みは http://eventregist.com/e/ikinoato
映画『息の跡』:東日本大震災で被災した、岩手県陸前高田市の種苗店「佐藤たね屋」の復興の記録。被災後の生活や陸前高田の文化や歴史について外国語で綴り世界に発信している店主・佐藤貞一さんの活動を記録したドキュメンタリー。
http://ikinoato.com/↓
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