オペラ『蝶々夫人』 バイリンガル上映 Pacific Opera Projectが 史上初の試み(Weekly LALALA 791号掲載)

オペラ『蝶々夫人』 バイリンガル上映  Pacific Opera Projectが 史上初の試み

POP(pacificoperaproject.com)は日本人役はすべて日系米国人の歌手が日本語で演じ、米国人役はすべて米国人歌手が英語で演じるというバイリンガル上演に挑戦。3度のロサンゼルス公演はいずれも大成功を収めた(Photo by Martha Benedict)

 日本では「敷居が高い」というイメージがあるオペラ。しかし、欧米ではカジュアルな服装で観劇する若者もよく見られる。オペラ作品の多くが欧米の言語による上演ということもあり、日本人にとってはなかなか馴染みにくい身近に感じづらいようだが、そんなバリアを破ったのがPacific Opera Project(POP)だ。今月、ロサンゼルスのアラタニ劇場にて、イタリア人作曲家ジャコモ・プッチーニの有名オペラ作品『Madame Butterfly(蝶々夫人)』の史上初となる日英バイリンガル上演を行った。
 『蝶々夫人』の原作は1898年にアメリカで発表された短編小説。これを劇作家デヴィッド・ベラスコが戯曲化して上演し、それを観たプッチーニが感激して曲を作り、オペラとした。プッチーニの心を動かしたのは、主人公蝶々さんの純粋で誇り高い生き様だったという。舞台は明治時代初期の長崎。芸者に身を落とした元士官の娘、蝶々さんは米国海軍士官ピンカートンに落籍される。ピンカートンはやがて母国に帰り、蝶々さんは産まれた息子とともに彼を待ち続ける。3年後、ようやく日本へ戻ってきたピンカートンは米国でケイトという女性と結婚していた。息子を引き取ると言われた町長さんは絶望の果てに一人死を選ぶ、という悲恋のストーリーだ。
 今回、POPがヒューストンのOpera in the Hightsとの共同作であるこのプロダクションでチャレンジしたのは、日本語と英語の2言語での上演。日本人役は日系米国人の歌手が演じ、歌詞はすべて日本語。米国人役は米国人歌手がすべて英語で演じ、ステージ上部に両言語での字幕が常に表示されるという画期的な試みが行われた。
 このバイリンガル上演は芸術監督ジョシュ・ショウさんの長年の夢だったといい、より〝リアル〟さを見せようと、コーラスも全員日系人。そして日本文化を忠実に表現するために日本人デザイナー押元須上子さんを起用した。劇中では『さくら さくら』や『君が代』などの日本を代表する曲も取り入れられ、和風情緒が漂う雰囲気は日本人には馴染みやすい作品だ。
 3度の公演はいずれもソールドアウト。セリフがメロディーに乗って歌われるオペラでは聞き取りづらいこともよくあるが、観劇した人からは「両言語での字幕がとてもわかりやすかった」と大好評。「出演者のレベルが高くて非常に見ごたえがあった」といった声も聞かれ、史上初の試みは大成功を収めた。POPは今後、8月に『The Mikado』、12月に『La Boheme』のプロダクションがロサンゼルスでの公演を予定している。