「物語と音楽が 織りなす世界観」(Weekly LALALA 727号掲載)

「物語と音楽が 織りなす世界観」
南方 裕里衣|Yurie Minakata

ロサンゼルスで暮らす人々   映画作曲家・編曲家

ロサンゼルスを拠点に、映画作曲家・編曲家/オーケストレーター/ヴィオリストとして活動をする南方裕里衣さん。 www.yurieminakata.com

 映画と音楽は一見別々のものではあるが、その二つがスクリーンの中で絶妙に重なりあうごとに、感動を人々に与える力は加速する。
 ロサンゼルスを拠点に映画作曲家・編曲家として活動する南方裕里衣さん。彼女もまた音楽の作り手として、物語と音楽が融合し、一つの世界が作り出される瞬間に喜びを感じると話す。「私自身、もともと物語に触れるのがとても好きでした。音楽の素晴らしさを子どもの頃から感じてはいましたが、音楽が持つ力の意味をわかったのは大人になってからのことです」
 音楽を始めたのは中学の頃に弾き始めたヴィオラがきっかけ。その頃はただヴィオラの音色が好きで弾くことが幸せだったという。「音楽高校に進んだ頃からだんだんとヴィオリストとしての自信を失くし、完璧に弾かなければという気持ちに押しつぶされそうになりました。自分が求める完成度が高くなればなるほど、人前で演奏するのが怖くなったんです」
 そんな自分をヴィオラや音楽から一旦離そうと考えた南方さんが向かったのは、ボストンの四年制大学だった。音楽に没頭することなく、普通に大学生活を過ごしていた。そんな時にバークリー音楽大学に通う友達と知り合って話を聞いているうちに、突然音楽を作ってみたいという気持ちが湧き出てきた。「大学四年で卒業ももう間近の時でした。直観でバークリー音楽大学を受けたいと思ったんです。願書もぎりぎりで送ったところ受かったんです。バークリーからの合格通知を受け取った時、まだ自分の中に音楽の可能性があるんだと感じました」
 バークリー音楽大学の映画/ビデオゲーム/テレビ音楽の修士課程で学んだ。作曲家としてはゼロからのスタートゆえに、周りの学生との落差も最初は感じた。「音楽プロジェクトを重ねるうちに、自分の頭に描く音楽を表現できるようになりました。音楽作りを通して、失敗や後悔を繰り返しながら自分の中で糸口を探しているうちに、自分のビジョンがはっきりとしてきたんです」
 昨年7月に同大学院を卒業してLAに移り、映画作曲家でありヴァイオリニストとしてもパイレーツオブカリビアンをはじめ多くの映画音楽制作を手掛けるリリ・ハイドンのもとで働き始め、2018年度には全米でもHulu配信されたアニメ東京喰種で知られるやまだ豊氏のもとで邦画やアニメの音楽制作にも携わるなど、日米での音楽活動をスタートした南方さん。「昨年は大学院に入り、自分の進路を決め、LAに引っ越してきたという、石橋を叩いて渡る性格の自分にとっては、予測不可能な1年でした。今年も自分の気持ち以上に直観的に様々なことに手を出して、新しい可能性を探していきたいと思っています」。

世界的に有名なロンドンのレコーディングスタジオAir Studioでの自作品のレコーディング風景。指揮を振るのが南方さん。
映画の作曲家・編曲家のほか、ヴィオリストとしてスタジオミュージシャンとしてレコーディングにも参加。

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