「渇望が作品生む」 ショートショートフィルムフェスティバル in Hollywood 河瀨直美監督マスタークラス(Weekly LALALA 781号掲載)

「渇望が作品生む」 ショートショートフィルムフェスティバル in Hollywood 河瀨直美監督マスタークラス
ショートショートフィルムフェスティバル&アジアの20周年を記念してハリウッドで行われたマスタークラスでは、河瀨直美監督(中央)が自らの体験や作品について語った

 去る1月17日、ハリウッドのTLCチャイニーズシアターにて『ショートショートフィルムフェスティバル in Hollywood』が開催された。米国アカデミー賞公認かつアジア最大級の国際短編映画祭であるショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)の20周年記念として行われたこのフェスティバルは17年ぶりにロサンゼルス上陸。今回は河瀨直美監督によるマスタークラス『映画の可能性』が開かれ、監督による次のような数々の印象的な言葉が残された。

レッドカーペットを歩く河瀬監督。「リアリティを追求しても、本当に起こったことに勝るものはない。私たちの人生に勝るものはない」と語った

平成と歩んだ映画作り

 映画が自分の元に舞い降りてきてから、30年。日本では平成という年号があり、私はちょうど平成とともに映画を作り続けてきて、今年その平成が終わる。その中で、特に最後の10年、40代の作品を作るスピードはそれ以前の20年と同じぐらいだった。振り返ったとき、自分の中ではそれが何だったのかと考えると、とにかく渇望していた。“作る”というのは、何かが足りないということ。それがなにかを発見し、見つけて形作る。やり方がドキュメンタリーなのかフィクションなのかなどは、出会う人たちとのコラボレーションを切に願いながら、出会う人と自分の渇望がマッチングしたときに作品が生まれるという形で進んできた気がする。

ハングリーさ常に追求

 6年前、スティーブン・スピルバーグ監督とカンヌで審査員をご一緒させていただいて。その時に、監督がくれた「いつも作家はハングリーでいなければならない」という言葉がある。それは彼が自分自身に課している言葉なんだなあと。キャリアを重ねていくと、名前や功績で作品を作らせてもらえる環境ができあがっていく。そんな時に、ハングリーでいることがなぜ重要なのかをすごく考えさせられた。そういう意味では、人間は人と触れ合いながら、その人が発したことが自分自身に影響を与えるという思いで、謙虚に自分のハングリーさを追求していくことが重要なのかなと。特に作家は、それを持っていないといろんなものに甘んじていく環境が用意されているというか。そことの戦いなんだろうなと。

未来切り開く作品作り

 この10年はフィクション、長編映画を中心に作ってきた。この先、2020年には東京五輪が56年ぶりに開催されるが、56年という月日は、私たち人間を取り囲む歴史の中でも急速に大きな変化があった時代。デジタルの時代、そして通信、コミュニケーションが大きく変化し、メディア、特に映像の変化は著しい。同時多発でいろいろなことを共有できるという時代に、自分が作る映像というものが言語というものを伴って、物語を通して何をこの時代に残していけるのかということを考えている。リアリティを追求しても、本当に起こったことに勝るものはない。私たちの人生に勝るものはない。さまざまなところですごくすばらしいドラマは起こっている。そこにカメラの眼差しを向けていくっていうところで、自分が何をしたいのかっていうことを考えると、人類の明るい未来を想像したい、平和で喜びをもって生きていける世界を作りたい。そういうときに、映像が持っている真実というか、より良い未来を切り開いていくためには、自分が真摯にそのことに目を向けて、未来の子どもたちに「この世界は美しいんだよ」と思ってもらえるような作品を作りたいと思っている


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